(11/12)シンジケートは呟く

「翻訳ミステリー大賞シンジケート」事務局がTwitterで更新情報を流し始めたようである。ID(で合ってるのかな?)はHonyaku_Mystery。Twitterを使われている方は、よかったら見てみてください。私は個人でTwitterを使わない方針なので、こちらの更新投稿にはあまり関われないと思います。

 以前にこの日記で、Twitterに代表されるつぶやきツールについて、推敲しない文章を人目に晒すことに対する疑念を持っていることを表明した。あのあと某氏から、「未推敲の文章を人に読ませる行為は、ツールではなくて、書き手の問題なのではないか。ブログだって、そういう垂れ流しの文章を書けるわけじゃん(大意)」というご指摘をいただいた。それはその通りである。Twitter利用者を批判しているように思われたら申し訳ない。お詫びします。

 書き手の意識の問題なのである。内から発したものをどこかに届けようとする思いが文章を書くための動機である。「届け」と思い、届かせるために最善を尽くす。だが、どこまでいっても「届いている」という思いは自己の幻想でしかなく、本当のところはわからない。届いていると思いこんでいるだけの話で、実はどこにも届かないものを書いているのかもしれないのだ。恐ろしいことである。だが、恐ろしさを自分で引き受けなければならないとも思う。今こうして書いているものが自己の幻想の内壁に投げ当てている礫にすぎないのか、いつかは誰かから返されるキャッチボールであるのか、確かめる術のないままにただ最善を尽くしながら「届け」と念じ、文章を綴るしかない。つながっているという幻想に逃げ込んじゃだめだ。それは自分を弱くする。そうした自戒が、書き手には必要なのだと私は信じている(だから、最初から配信だけが目的で諸ツールを利用するというのは、正しいあり方なのだとも思います)。

 昔ホームページを設置したてのころに、福井健太氏から「杉江さんはネットに期待しすぎ。反響を期待しちゃだめですよ(大意)」と言われたことがある。そのことが自分の中でどこかにひっかかっている。インタラクティヴ、という理想に、私もやはり踊らされていたのだ。機能としてはレスポンスを期待できるツールだが、礫は礫である。そのことを忘れてはいけない。礫はもろかったら、当たった先で崩れる。雪の礫を投げ返してくれる人間はいないのだ。せめてしっかりと固めて、万分の一でも受け止めて放り返してくれる礫を作らなければいけないと思う。

 会社員時代、普及し始めたインターネットが職場の環境をどう変えていくのか、情報通信系の研究員に聞いたことがある。「インターネットが実現するコミュニケーションで、仕事の効率は上がるんですか」と聞いた私に、その研究員は言った。「いや、みんながネットを見だして怠けるから、むしろ落ちると思います」。そのことを思い出した。根は同じことである。道具は変わっても、使う人は同じ。作るものも同じ。一人で淋しいことも変わらない。

 

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(11/11)三津田信三さんとのトークセッション

 ジュンク堂さんに告知していただきました。

 定員五十名かー。ちょっと少ないような気がするが、ブックカフェでの開催だからこれ以上は入らないのかな。
 池袋店で別のイベントをやったときには、机を取り払ってぎっしり人を詰めたら八十人くらい入ったのだけど、それはそれで大変なような。

 とりあえず内容については今から検討します。

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(11/10)今年も闘います

 青山ブックセンター本店のホームページにはまだ告知が出ていないのだけど、AXNミステリーの番組内でお知らせが流れたというので書いてしまいます。

 毎年恒例「闘うベストテン」の公開収録を今年も行います。時期は例年より少し遅くなって、12月19日(土)。13時開演で15時終了予定です。問い合わせ先などがはっきりしたら、この欄でもまたお知らせします。

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(11/6)文庫解説

 東京創元社から見本をいただいた。
 あのアントニー・バークリーの名作『毒入りチョコレート事件』の解説を書かせてもらったのである。創元推理文庫が存続する限りは、おそらく消えることがない作品であるだけに緊張感も一入。気合を入れて書いたので、初読の方もそうでない方も、どうぞご覧になってみてください。


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(11/5)初心者のための作家入門講座

「翻訳ミステリー大賞シンジケート」で新企画を始めました。名づけて、「初心者のための作家入門講座」。

 あの作家はおもしろいってみんな言うけど、作品数が多いし、どこから読んでいいかわからない……。

 そう思っている人を対象に、最初に読む三冊はこれ、というお薦め本を挙げていきます。講師を務めるのは、翻訳者や書評家など、作家のことをよく知っている方たち。第一回はスティーヴン・キングの魅力を、キング翻訳者として名高い白石朗さんに教えていただきました。詳細はこちら

 さて来月は、どんな作家を、誰がお薦めしてくれるのでしょうか。

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(11/4)午前零時のサンドリヨン

 鮎川哲也賞の選評はいつも分析的で参考になるのだが、今年は特に優れている。受賞作『午前零時のサンドリヨン』を読了して、そう感じた。北村薫さんが新たに加わった効果なのだろうか。

 興味深かったのは、笠井潔氏がこの作品の語り文体(主人公の僕が読者に語りかけるように綴る)について「庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』を思わせる」とし「薫文体の軽さは、軽さという重さであり、それは時代によって形が異なる」(この物言いはわかりにくいが、庄司は時代の空気に逆らってあえて軽さを選択した作家である。そうした意志の重みを指しているのだろう)が、『午前零時のサンドリヨン』の作者である相沢沙呼は「軽さの意味をあまり深く捉えていない」「この文体がそのまま四十年後でも通用するだろうか」と批判した点である。

 鮎川哲也賞の受賞作品にそこまで時代と切り結ぶことを求めるべきか、という異議がありうるということを一応指摘しておきたい。だが笠井氏は文体以外にも、「この時代を生きることへの作者の態度に疑問がある」とし、問題点を複数挙げている。「ケーキのトッピング程度」「(主人公の苦悩を)この程度に設定しておけば、悩んでいることになるだろう、悩んでいる人物として読者に通用するはずだという判断の常識性」(常識を疑いもせずに作品に書き込んでしまう無邪気さへの恐れ、ということか)といった厳しい批判は、小説を読んだ限りでは的確なものである。米澤穂信作品の持つ「苦さ」のようなものが欠けているという指摘ももっともだ。

 この点について、山田正紀氏は優しい弁護を述べている(どうやら四人の選考委員のうちで山田氏が一番の擁護論者だったらしい)。「ちょっとビターでスイートなラブコメ」として本書を推すという意見には賛成だ。小説をそういう観点から評価する人がいてもいいのである。主人公とヒロインの人間関係を「『うる星やつら』のあたるとラム」に喩えたのは若干誤解を招きかねないが、高橋留美子の名作の如くヒロインが主人公を追っかける図式が成立しているのではなく、ボーイ・ミーツ・ガールの図式と、「ヒロインの真の顔を主人公が知ること」が物語の主題になっているという点に山田氏は相関を見出されたのではないかと思う。

 島田荘司氏は両者の意見を公平に聞き比べた結果、山田氏支持に転じたようである。その指摘も的確。主人公を「安全な愛玩動物的男子」と断じ「少女趣味型の定型パーツ」によって組まれた物語と作品を評した。これももっともである。島田氏が笠井氏と異なる点は、あくまで視点が読者寄りであることだ。作品がミステリ・マニアのスノビズムに彩られていることは認めつつも、読者の立場から見て場合、文章と物語運びに逃れがたい「吸引力の強さ」があることを大きく評価し、それを作者のセンスと見なした。笠井氏が認めなかった語りの文体も、その吸引力のための撒き餌と見做したのである。この辺の違いに、両者のミステリ観が見えて私にはおもしろかった。

 最後の一人、北村氏に関しては、作品が持つ老練な感じに着目し、応募作が受賞後の書き直しによってどの程度改善されるかにこだわられたようであった(他の賞でも同様の評を見たことがある)。これはあくまで『午前零時のサンドリヨン』一作に限ったことで、作者である相沢氏の「のびしろ」の有無を問う評ではないだろう。

 公刊された作品に、どの程度加筆修正がなされたかは知る由もない。だが「まとまり過ぎ」という北村氏の評は、笠井氏の批判と同様、この作者が真摯に受け止めるべき言葉だと私は考える。『午前零時のサンドリヨン』は、愛らしく、素敵な小説だ。作品としての完成度も高い。四つの小エピソードが最後にまとまったときに真の解決が訪れるように設計された小説で、伏線の置き方や、恋愛ドラマとの組み合わせなどにも芸があって、誠に結構である。だが、このまとまりはあくまで今回限りのものなのだ。愛嬌のある主人公、わかりやすい弱点があるヒロイン、甘いラブコメ風の雰囲気など、すべての要素が今回は正の方向に働いた。逆に言えばどれを欠いても成立しなかった物語ということで、似たような部品を使って第二の『サンドリヨン』を作ることはできないのである。

 作者が資質を問われるのは次回作だろう。願わくば本書の続篇ではなく、まったく違った題材によって読者に向き合われることを期待する。「DL2号機事件」の次は、やはり『11枚のとらんぷ』であってもらいたいのだ。


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(11/3)おおそうだ

 すでにこちらでも宣伝していただいているようですが、AXNミステリーで綾辻行人さんのインタビューをやらせていただいたのが、本日から放映されているようです。収録日は台風が関東に大接近したあのときで、我が家ではえらいことになっていたのでした

 放送日は以下の通り。

放送日
11/3(火)16:00
11/3(火)26:30
11/4(水)26:45
11/11(水)16:00
11/12(木)26:45
11/14(土)17:15
11/17(火)16:00
11/19(木)26:45
11/24(火)26:45
11/26(木)16:00
11/28(土)17:15
11/30(月)26:45

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(11/3)たらりらったりったらった

 対談のため、初野晴さんの『1/2の騎士』を読み返していて気付いたのだが、終章で明かされる大仕掛けのための伏線が、初めのほうでかなり大胆な形で置かれていることに改めて気付かされた……が、同じところにひっかかった人はきっとおいちゃんかおばちゃん(車寅次郎風)のはず。この本の主要な読者層と思われる十代の男女は、それがどうした、という感じで読み飛ばしたものと思われる(キーワードを入れてネット検索したのだが、引っ掛からなかった)。物語を楽しむ上では気付かなくてもまったく構わないのだけど、個人的にちょっとおもしろかったので書いておきます。

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(11/3)今のところ大森さん優位

 おっと、十一月になったのでAXNミステリーのBOOK倶楽部ページが更新されていた。
 今月の私のお薦め作品はエリック・ガルシア『レポメン』である。動画をご覧になってみてくださいな。

 ちなみに収録のあとは、神楽坂の焼肉三宝で打ち上げ。ここはプロレスラー栗原あゆみさんの実家で、店内にも女子プロレスの興行ポスターが多数貼ってあった(プロレスラーがくる店らしく、料理のボリュームもある)。焼肉をつつきながら横の座敷を見ると、栗原さんがいてマネジャーらしき人と打ち合わせをしていた。プライベートで女子レスラーを見かけるのはひさしぶりだった。

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(11/2)来場御礼

 昨日の初野晴・真藤順丈さん対談にお越しいただいた方、ありがとうございます。楽しんでいただけたでしょうか。初野さんが意外な話上手だということを知って、驚かれた方も多かったと思います(私も実はそうでした)。また真藤さんが実は「○○○い」性格だということも……。

 告知の期間が短く、限られていたため、率直に言って満足のいく来場者数とはなりませんでした。ゲストの方のお二人にはご多忙の中時間を割いていただいたのに、特に初野さんには休日を潰して遠路はるばるいらしてくださったのに、申し訳ないことをしてしまいました。にも関わらず、たいへん興味深い話をいただけました。来場者の方も、お話にはきっと満足していただけたことと思います。お二方には心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 もう明かしていいと思いますが、十二月に三津田信三さんのトークイベントの司会をすることになりそうです。詳細が決まりましたら、またここでお知らせします。

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