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工学部・水柿助教授の逡巡

「工学部・水柿助教授の逡巡」

 森博嗣ファンの気持を長州力風に代弁すると、何がやりたいんだコラ! ということだと思う。あ、いや、やりたいことは明確なんですけどね。フィクションの中で言葉を玩ぶこと、それ自体がやりたかったはずである。赤川次郎の対偶をいく、作者の独白が続いて読者の没入を阻む導入部であるとか、ちょっとでも気取りがあったら書けないであろう駄洒落遊びであるとか、内容をまったく反映しない各話の題名であるとか、要するにふざけているのである。徹頭徹尾ふざける。それがこの小説の目的だ。前作の『工学部・水柿助教授の日常』が、「日常の謎」を題材にしたミステリー風小説だったので、それを期待して読む人をはぐらかす意図の小説でもある。また作者の分身に見える人物を主人公とし、これはモデル小説なんだ、変形の私小説なんだ、と思い込んだ読者をおちょくるための小説でもある。

 他人がふざけているのを見て、そのふざけぶりをおかしく感じるか、鬱陶しく感じるか、それは相性の問題だ。したがって一話を読んで鬱陶しく感じた人は無理して先に進まずに本を閉じ、森博嗣のもっと真面目な作品を読んだほうがいいと思う。無理して読んじゃ体に毒だよ。 森博嗣がふざけているのを見て、ああ、森さんはふざけとるわい、あはは、と笑えた人のみ、本書を読み通すことができる。247ページに感心した一節があって、それはこの小説の虚構性を的確に表現しているのだけど、もしかするとネタばらしになってしまうかもしれないのでここには書かない。小説を読んで、なんとなく釈然としない思いを抱いた人だけ、そのページの1行目から読み返してごらんなさい。ああ、そういうことだったのかと、視界の靄が晴れる思いがするから。

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