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大櫛陽一『メタボの罠』角川SSC新書

 大櫛陽一『メタボの罠』は2007年4月に厚生労働省が発表した「標準的な健診・保健指導プログラム確定版」を批判する本である。これは2008年以降実施される特定健診・特定保健指導の判定基準となるもので、この判定値に基づいて各自治体などで健診が実施されれば、男性の59%、女性の49%が通院を促される受診勧奨者となり、その数は3060万人に達するという。特定健診は生活習慣病を水際で予防し、医療費削減につなげるという理念の下に実施されるものだが、実際にはその逆で、通院者が増え医療費は飛躍的に増加する、と大櫛氏は断じる。その結果医療行政は破綻し、長期的に見れば国民の医療費負担は増大するのではないかと懸念しているのである(たとえば人工透析などの高度医療が自己負担化される可能性があるという)。

「確定版」の決定の背景には厚生労働省と医薬品メーカーの癒着があるのではないか、という疑惑も表明されているが、それはさておき(それ以外に、特定健診では「痩せすぎ」や喫煙者が見逃される、高血圧症に対する降圧剤投与が増えるといったトピックも)気に懸かるのは、大櫛氏がメタボリックシンドロームが生活習慣病の要因であるという「定説」自体に疑念を表している点だ。

 2006年5月に厚生労働省は、メタボリックシンドロームの診断基準を発表した。念のためメモしておくと、以下のとおりである。

1)ウェスト周囲径 男性85cm以上、女性90cm以上
2)さらに次の1つ以上に該当すれば予備群、2つ以上に該当すればメタボリックシンドローム
・最高血圧130mmHg以上または最低血圧85mmHg以上
・中性脂肪150mg/dl以上またはHDL40mg/dl未満
・空腹時血糖110mg/dl以上またはHbAlc5.5%以上

 つまりウェスト周囲径が全基準の原点になっている。当初から、なぜ男性の方が女性よりもウェスト周囲径が小さいのかという疑問の声が上がっていた基準値である。その根拠になっているのは2002年に現・日本肥満学会理事長の松澤祐次氏が筆頭著者となって発表した論文だ。大櫛氏によればこの研究は、基準値を決めるためには被験者の数が少なすぎ(ウェスト周囲径の測定は男性554人、女性194人)結論ありきでデータが捏造されている(そのために男性のウェスト周囲径が女性よりも小さくなるというねじれが起きた)。内臓脂肪面積100平方cmという基準値は「占いレベル」であるため本当は健康なのに病気であると誤診される危険が高いものであるという。

 本書では一章が糖尿病の予防について割かれている。体型にかかわらず糖尿病は発病することがあるので、特定健診のみでは早期発見は難しいというのが要旨である(それはそのとおりだろう)。なお大櫛氏は、運動療法については「無酸素運動による筋肉量増強、空腹時運動が望ましい」「朝食を抜くと暁効果によって血糖値が上昇し、日中の血糖値が高くなるため朝食は抜かずに摂ることが望ましい」という立場。GI値も肯定している。

 メタボリックシンドロームの存在については多くの本が自明のものとして扱っているので、本書には新鮮な驚きを感じた。大櫛氏の説を鵜呑みにするのではなく、読者が各自で情報収集し、慎重に判断をする必要がある(文中のデータの扱いについては、反論した資料も探してみたい)。しかし糖尿病患者ならば啓発される点は多く、一読する価値は十分にある。


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