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(1/27)バカミスホイホイ・その1

 いろいろな方が世界バカミス☆アワードの結果について採り上げてくださっているようで、嬉しい限りである。
 ありがとうございます。

 最終候補作選出に携わった者として、それぞれの作品の評価ポイントを書いておくのもいいかと思うので、下に記します。あくまでも杉江個人の意見なので、選考者の総意ではない旨、お含みおきください。

 五十音順に
『官能的』鳥飼否宇(原書房)
 三中篇+一短篇の構成。主人公・増田米尊の変態行動が数学風の話題へと転じていくという趣向は、冒頭の「夜歩くと」がもっとも優れていて、残る二中篇はそれほど徹底されていない。しかし、カー/ディクスン作品のパロディという要素もあり、いかに縛りを増やした中で作品を作っていくか、という作者の執念を感じた。最後の「四つの狂気」でさらに加算。驚天動地というほどではないが、サービス精神旺盛の趣向で好感が持てる。

『荒野のホームズ』スティーヴ・ホッケンスミス(早川書房)
ホームズ・パスティーシュ、西部小説、教養小説、相棒小説と複数要素をミックスし、捨てるところのない完璧なエンターテインメントぶりである、というのは以前にも書いた評。ホームズ・マニアの兄貴の設定でさらに点を稼いだ。ホームズ・パスティーシュとして、かなり手が込んだ仕掛けをしているし、何をするのでもホームズありき、というオフビート・キャラクターをヒーローとして成立させている点も偉い。犯人当てとしてもきちんとしている。

『ジョニー・ザ・ラビット』東山彰良(双葉社)
兎が主人公のハードボイルド、というだけでもかなり点は甘くなるが、出落ちで満足せず、擬人化の度合いを慎重に計算している点が良い。前半は黒人ハードボイルドの味、後半は破滅に向かって突き進むチェイス型の犯罪小説の味だ。特に後半は、絶対に理解しあえない運命にある者同士がバディを組むという、悲劇的な相棒小説としても出色である。プロットがごたごたしている点などが瑕といえば瑕だが、勢いで克服している。

『名もなき書』Anonymous(PHP研究所)
○○かと思ったら○○だった、という感じで、途中プロットが横滑りする。登場人物が無駄な動きをしたり、思わせぶりな伏線が途中放棄されたりするなど、出鱈目な部分は多いのだが、B級西部小説のパロディのような展開だけで許せてしまう。もっとも可笑しいのは、鳴り物入りで出てきた登場人物があっさりと死んでしまう展開が続く点。まるで、ゆでたまごの書いたウェスタン小説のようである。

『メアリー-ケイト』ドウェイン・スウィアジンスキー(早川書房)
これもグダグダ展開。おそらく作者がコミックブックの原作をやっているのが悪い方向に影響しているはず。だが寄り道のエピソードに楽しい味があり、正統派のサスペンスファンからは鬼子扱いされそうだが、庇護してやりたくなった一篇。なんといってもびっくりさせられたし。登場人物をピンチに陥らせるため、次々に無茶な設定を繰り出してくるところも稚気があって好感が持てた。こんな話なのに、きちんと物語に蓋が出来ている点も意外。

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