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(2/20)ブレット・ハリディ

 昨日は池袋コミュニティ・カレッジで「ミステリーの書き方」講座の講師に行ってきた。
 
 今回の課題は、ブレット・ハリディ「死刑前夜」(早川書房『天外消失』所収)を読み、十分の一に要約するというものである。ルールは、原型をなるべく壊さないで縮めること。つまり、文字数が起承転結で1:3:3:1になっていたら、同じように縮めるのである。「死刑前夜」はだいたい一万五千字くらいの作品なので、それを千五百字にする。これによって何を狙っているのかというと、必要なパーツの見極めをすることである。何気ない描写に偽装された伏線、二重に意味がとれるように書いてある表現などは、作者が意図して埋めこんだものだ。そうした要素が、どのようなペースで配置されているか、要約を通じて学ぶというのが目的である。

 これはたいへん勉強になります。要約を実際にやってみるのがいちばんなのだが、時間がない人はマーカーなどで本に(いやならコピーして)印をつけていくといい。

 それにしても「死刑前夜」は素晴らしい短篇だ。小泉喜美子さんが激賞されたのもわかる気がする。原文をあたってみないと確実ではないのだが、businessという単語が複数の意味で用いられていて、効果を上げている。人の感情を直接書かず、仕草や語調で表現するというハードボイルドの手法を用いてサプライズの演出を行った作品であり、相棒小説の佳品でもある。短い中に、私がミステリー短篇で必要だと思うことがすべて尽くされていて、何度読み返しても感心させられるのである。

 これからミステリーを書いてみたいとお考えになっている方は、この短篇に学ぶことを強くお薦めします。

追記:今気がついたけど、この本は現在Amazonにおける売り上げが4675位である。売れているんだ。喜ばしいことである。「ミステリマガジン」に寄稿した書評が売り上げに少しでも寄与しているのならこんなにうれしいことはない。

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