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(4/22)嫌われ者の記

 ここ数日、暇さえあれば(暇なんてないんだけど)塩山芳明さんの本を読み返している。『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』の二著書で有名な、漫画屋代表のベテラン編集者だ。ちくま文庫に入っている『出版業界最底辺日記』は、『嫌われ者の記』からの再収録分があるということで敬遠していたのだけど、これまで読まずに損をした。抜群におもしろい。

 出版界をはじめとした世の中のあらゆる事象にためらないなく悪罵を叩きつける態度が気持ちがいい。自らは非常に清潔で、何者にもおもねらない姿勢を堅持している点がすばらしい。以前に『嫌われ者の記』を読んだときは、おもしろく感じながらも、やや鼻白む印象があった。というのも、塩山さんはたいへんな読書家なのだが、好みがはっきりしていて、けなす作家はとことんまでけなすことがあるからだ。好きな作家をけなされて気分が悪い、なんて、以前の私はなんとお子様だったことでしょう。もちろん、けなすといっても作品本位だ。「批評はおもしろいが小説は三流」「人間はクズだが小説はおもしろい」といった具合に、良いものは良いときちんと認める人なのである。大筋で意見が一致していても各細部が異なるということはよくある。そのとき、細かい差異を認めずになあなあで済ませるのは卑しい態度であり、野合である。似た立場だからこそ、差異については徹底的に論議すべきだ、という当然の態度を塩山さんは貫いているのである。だから塩山さんの本を読んだあとは、甘い書評が書けなくなり、商売上非常に困る。

 塩山さんは、引用ばかりの文章を商業媒体に発表する書き手を小馬鹿にする。楽して金稼いでんじゃねえ、ということである。この原稿は商業原稿じゃなくて私的なブログだから、構わず引用しちゃうことにする。気になったら、本を買って読むように(太字は引用者)。

 ――事務所に戻ると、伊集院808が原稿を持参していた。「これで俺、漫画やめます」「遅すぎたが、よく決断したな」とほめる。売れ筋漫画家の間に、奴の超売れぬ単行本をまぎれこませ、今まで4冊も出してしまった自らも反省。こういう感傷が。”ちょっとだけ面白いが基本的に無能な人間”の人生を謝らせる。「いいじゃんかよ。くたばる時にゃ、孫がオメーの棺桶に単行本入れてくれるぜ。”お爺ちゃんて、20世紀の有名なエロ漫画家だったんだってね”とか言って」「へへへへ……」/黄ばんだ出っ歯の隙間から、気色悪い笑みを漏らした伊集院808が、永遠に去る。

 このハードボイルドさに痺れない編集者は、今すぐ職を辞するべきだと思う。

 ――上信電車で『アイウエオの陰謀』(東海林さだお・文春文庫・本体488円)に。信じ難い退屈さ。この人の漫画が80年代で終わったというのは常識だが、遂に牙城の文章にまで!? と言うか、馬鹿な編集がおべっか使い、「今回は不条理コラムで!」とか乗せ、作者もその気になったとしか。全国の東海林ファンも、本書だけは買うべからず。

 好きな作家もこのとおりけなす。

 ――ただ中の1冊『風俗江戸東京物語』(岡本綺堂・河出文庫・本体977円)には、事前検査の胃カメラ以上の不快感を。中身ではなく、解説の今井金吾なる糞野郎にだ。今読むと部落差別に当ると、原文をバッサリカット。”これは綺堂の限界であって”とか書いてるが、それは読者自身が原物を読んで判断する事。半世紀以上前の事でエラソーに裁判官気取り。貴様のような時流便乗野郎は、いつの時代でも自主規制という名で読者におもねる。最も救い難い文化退廃の元凶。

 説明の要なし。そしてこれ。漫画家の刹奈さんが亡くなったときのものだ。

 ――殺人事件等が起きた場所に、無関係な者がTVカメラを意識しながら、花を捧げる心理に通じるのか? 漫画家が亡くなった際、いち早く関連サイトに追悼文を書き込んでは、溜飲を下げている糞共の事だ。今度の刹奈さんの死にも、エッラソーにオメーらが空涙流さなくとも、善人は天国へ、悪党は地獄へ。(もちん彼女は前者)漫画屋BBSにも数件。大日本のアイサツしない例の集配野郎以上に不愉快。削除しようとしたが、刹奈さんの思いやりに溢れた顔を想起、放置。(ちゃんと自分の言葉で語っている分には、腹も立たない。すぐ”心から冥福を祈る”、新聞記者気取りのチンコロ野郎がムッカムカ!!)

 血を吐くような文章だぜ。


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