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(4/23)続・嫌われ者の記

 昨日に続き、塩山芳明さんの著書を紹介したい。二〇〇七年の『東京の暴れん坊』だ。「俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画」との副題通り、著者の趣味である映画と読書、仕事であるエロ漫画編集についての本で、過去に発表した書評などのコラムに原稿用紙100枚分の書き下ろしを加えて単行本化してある。

 映画評もおもしろいのだが(小池朝雄の評伝が抜群。山田洋次のダークサイドについて書いたものもいい)、やはり自分の職業柄、書評に目が行く。本書は一九八〇年代の文章を集めた第一章から二〇〇〇年以降の文章の第三章まで、年代別の編集がされているのだが、中でも第一章の「買わない方が得する本」と第三章の「奇書発掘」が目玉である。両方とも題名だけで内容がわかるのが素晴らしい。塩山さんの書評のスタイルは基本的に、1)作者の嘘(欺瞞、助平根性、パンツの中)を告発する、2)著者がバカだと暴く、3)著者の変態性を見抜く、4)著者の清潔さを讃える、の三つの柱から成り立っており、本書に収録されたものでは1)2)のものが多い。たまに3)4)に類するものがあるのだが、これが無茶苦茶おもしろく、即座に本を買いに走りたくなる。松尾スズキ『厄年の街』(扶桑社)は3)、菅井きん『わき役ふけ役いびり役』(主婦と生活社)は4)だ。漫画の書評(というか編集者としてつきあった経験もふまえた作品分析である)だが、いがらしみきおの初期作品について書いた文章の素晴らしいのなんの。

 ――(東海林さだお作)”アサッテ君”をはじめとする人々は、交差点で交通整理をする美人婦警を見ても「寝てみたい!!」と思うだけ。いがらし漫画のキャラクター達は、よもやそんな大それた事は考えない。「この熱いのに大変だなァ。あの人のパンツ汗だらけだろな。臭いだけでもかいでみたいなァ、ム~ン」/疎外された”非中流国民”には、想像力の世界でも人並である事が許されない。

「想像力の世界でも人並である事が許されない」! すげえ!!

 いかんいかん、書き出すときりがない。また仕事にならなくなる。あとは自分で本を買って読んでくれ。
 以下はオマケ。クイズである。書評の一部を抜粋するが、書名と文章をばらばらにして書くので、各自組み合わせみてもらいたい。で、上の1)~4)のどれに該当するかを自分で考えてみること。

【書名】
a)笙野頼子『幽界森娘異聞』
b)金井美恵子『おばさんのディスクール』
c)田口久美子『書店風雲録』
d)車谷長吉『反時代的毒虫』

【文章】
A)無神経な女(愚妻ほどではないが…)。他人の幸福ほど、人間の真情を逆撫でるモノはないとの、普遍的真実に実に無自覚。成功者の有能なゴーストライターは、成功のきっかけをつかむまでの無名時代や、夢を実現後の挫折期に多くのページをさく。いざ金や名誉を獲得してからの生活など、何の分野でも類したもので、表現のしようがない(うらやましがられるのは一瞬で、飽きられるか反発を買う)。

B)○○は”子役作家”だったのだ。役者で言えば『特捜最前線』あたりにゲスト出演してる、市川好朗とか保積ペペ(それにしても保積ペペは気色悪い。顔は、”おめえヘソねえじゃねえか”の頃と同じなのに、体はマッチョなんだもん)。今風に言えば、ロリコン作家とでも言おうか。本の中でも藤枝静男に、「白痴的な子供っぽさ」を指摘されたとうれしそうに紹介しているが、当人は今や自分の割れ目に毛が生えちゃってるのに気づかず、少女M気取りだからあきれる。

C)今回は○○。昔っから大嫌い。書く物は悪くないが、一行読む度に電卓の音が。誰にも打算はあって当然だが、客の面前で露骨に利幅を数えるな。この程度ならまだ耐える(文章芸とでプラマイゼロ)。一番不愉快なのは、客に、”露骨な電卓音を聞かせ嫌われる”ことで、己れのキャラ、及び商品価値を高めているから。確信犯。広告代理店時代は、さぞ優秀な社員だったろう(20歳も若くして、既に瀬戸内寂聴の境地)。

D)純文界でドブスと美男の双璧をなす、両者の新刊が同じ値段と言う所に…じゃなかった、今回の○○の新刊は、”森茉莉の評伝もどきで小説もどきの実は例によってのマジブチ切れ○○怒りの爆裂弾記”。例によってのと書いたが、無論ほめ言葉(試着室のぞき…いや女流棚通いは、佐藤亜紀、松浦理英子の新刊発行時にもするが、ご両人既に枯れ気味で、”例によっての”の水準を維持できてない)。


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