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(4/24)嫌われたくない者の記

 起床して確認したらいつもはほとんどないトラックバックが。訝しく思い確認を。六本木の公園で全裸になったタレントに関するものばかりで思わず爆笑。「嫌われ者」のタイトルがついたエントリーにトラックバックをかけるとは(おそらく自動なのだろうけど)どういう悪意の持ち主なのか。朝の爽やかな目覚めをさらに爽やかにしてくれたひょうきん者に感謝しつつ、事務局に迷惑通報して削除を(以上塩山文体を模写してみました)。

 仕事の合間に塩山本を読んでいるのだが、そのさらに合間に別人のエッセイを読むと、まるで出汁もとっていないような薄味の吸い物を飲まされた気分になる。もちろん塩山本のテイストは、化学調味料ごっそり、塩分がっつり、脂分こってり、ついでにニンニクましましの次郎ラーメンだ(豚ダブルでお願いします)。

 その不幸な本とは原田宗典『じぶん素描集』だ。十年に一度のオモシロ本を相手にして分が悪いのは確かなのだが、それにしても退屈な本である。理由は簡単で、原田宗典の「じぶん」「素描(スケッチ)」なのだから、「じぶん」が退屈なのである。本人が退屈な人間はエッセイを書くな。

 別に物を書くなと言っているわけではない。自分が退屈な人でも物語を創作すればおもしろいという人はたくさんいる。ほとんどの作家がそうだ。「小説すばる」誌はよく新人作家にエッセイを書かせるが(仕事が少ない駆け出し作家への救済措置の意味がある)、私はほとんど読まない。まだ一般人の自我しか持ち合わせていない作家のエッセイを読んでも、失望するだけだからだ。新人作家の書く、エッセイは90パーセントが退屈で、残る10パーセントのうち9割が鼻持ちならない自慢話である。エッセイとして読んでおもしろいのは1パーセント以下だろう(数少ない例外は、たとえば曽根圭介だ。作家デビュー前、アルバイト生活をしていた曽根が親戚の集まりで逆差別された、という話を読んだが、あれには爆笑した)。

 書評を含むコラムとは、取材して自分なりの論点を読者に提供するものである。そしてエッセイは、自分の切り売りをするもの。取材のないコラムがありえないのと同様、自己をさらけださないエッセイにはなんの存在価値もない。たとえば中村うさぎは買物依存症という自己の切り売りで一般誌でブレイクを果たしたが、連載が続くうちに愚にもつかない床屋政談のようなものを書くようになり、エッセイとしては質が落ちた。その後は、買物依存症どころか、もっと痛々しい方向へと自分を追い込んでいるのは、読者もご存じのとおり。痛々しいから止めたほうがいい、と普通の人間のセンスなら思うのだが、それをしなければエッセイストではいられなくなる、という書き手の焦りがあるのだろう。この道から抜け出るには、自己のありようをフィクションとして昇華する道を選ぶ以外にありえない。その方策をずっと中村は模索しているように見える。岩井志麻子もそうなのだが、交遊録を書いたり、座談会に出たりするような、つまらないお座敷を断って創作を行ったほうがいいと私は考える。

 脱線したが、要するに『じぶん素描集』は退屈だった、という話であった。たとえば「驚きのストリートビュー」というエッセイは、原田が娘にグーグルのストリートビューを教えられ、実際に試してみると我が家が映っている。それどころか原田の妻もモザイクつきで映っていて、連れていた飼犬の顔にまでモザイクがかかっていた。「思わず笑ってしまったが、その後「う~む」と考え込んでしまった/いいのか、これ? これでいいのか?」という内容である。いや、本当にそれでいいのか?

 毒にも薬にもならないほんわかしたものが好き、という人も世の中にいるから、本書の需要はあるだろう。「ひらがなのインパクト」というエッセイで原田は、お土産にもらった「うこん入り、粒黒糖」のラベルを読んで「これを見て「ハッ!」としない人が、はたしているだろうか。それとも「ひらがなのインパクト」を感じるのは僕だけ、だろうか?」と感想を述べる。「~するのは自分だけだろうか」というのは、「僕だけじゃありませんよね、みなさんもそう思いますよね、ねえねえ」という媚態を示すことだと私は考えている。あれだな、好かれたいんだな、みんなに。人に嫌われるのが怖い、という人は本書を楽しく読めるのだと思います。

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