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(4/27)続々・嫌われ者の記

 塩山芳明氏の最新刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』は、版元のアストラが刊行していた雑誌「記録」の連載「エロ漫画で食う」を単行本化したものだと思われる(本のどこにも書いていないのだが、『出版業界最底辺日記』などの記述から類推)。連載から十年近い時間が経っているため、業界記としては内容が少しだけ古くなってしまっている。そのため冒頭に「序章」として現在の状況が記され、過去に遡る形式の構成になっているのである。

 過去の塩山氏の著書を読んだ人間にとっては『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』『出版業界最底辺日記』の登場人物の「その後」を知ることができる本だ(漫画屋の吉田婆ちゃんこと吉田好貢氏の近況も)。もちろん初めて塩山本に触れる人にとっては、業界の入門書として興味深いはずである。特に現在三十代後半から四十代前半で、過去にサブカルチャーにかぶれたことがある人は、本書を絶対に読んだほうがいい。かつて、エロ・メディアがサブカルチャーの培地として栄えた時代があった。マイナーなメディアだから編集方針の自由度が高く、表現の実験が可能になる。ひねくれた言い方をすれば、状況の緩さが書き手の甘えを許したのである。そのため、単なる入れ物にすぎないエロ・メディアに、過大な幻想を抱いた者もいた(私もその一人である)。そうした思い入れが一部のマニアックな読者の思い入れに過ぎなかったことを、本書によって思い知らされた。いや、すでに気付いてはいたんだけどさ。塩山氏は、エロ本作りというモンキー・ビジネスの中で踊った人々の群像を、当事者ならではの視線で伝えてくる。

 昨今の漫画界にはトレース検証サイトのような形で作家の模倣を告発する読者が増えている。ツールが進化し、廉価化したことによってMAD動画やCG、コラージュが個人でも簡単に作成できるようになった。その反面、作家性の神格化も進んでいるようにも思えるのだ。作家の創作性に対する無邪気な憧憬の念が、いわゆるパクリ行為へのヒステリックな批判として現れる。「そのくらい(パクリ行為)なら、俺にもできるのに」という妬みの感情があるのだ。「やろうと思えばいつでもできる」「だけど(諸般の事情から)今はやらない」「やっている人間をとりあえず尊敬する」という屈折した三段論法が神格化の背景にあるはずである。本書では、そうした屈折の構造とは無縁の、漫画製作の現実が語られている。エロ漫画家という、憧憬からは程遠い(失礼!)職業は、なろうとしてなるものではなく、なってしまうものなのだ。「消えない漫画家のほうがアホ!」というのは、遠山氏の本音だろう。でも書いてきてしまう人がいるから、雑誌製作というビジネスが成り立つ。そうした、必然的に生まれてしまう灰汁のようなものとして遠山氏はエロ漫画業界を語るのである。なんの気取りもない態度にひたすら魅了される。

 もちろん、エロ・メディアに対する嘘偽りのない意見も開陳されている。エロに聖性を求めるようとする言説が、エセ文化人の欺瞞にすぎないことを、塩山氏は率直な物言いで証明するのだ。

 「でかい声じゃ言えないが、エロ漫画誌に限らず、あらゆるポルノは差別的だ。差別度が深いほど商品価値は高まる」

 この本音から出発しているからこそ、本書の内容を100パーセント信用することができるのである。

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