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(5/12)おまけがいちばん高い

 ミステリーの短篇集のあの「趣向」って、いつごろから始まったんだっけ。
 質問調で書き出したけど、本当は質問していません。紛らわしくて申し訳ない。「いつか」なんて本当はどうでもいいんだ。

「趣向」が何を指すのかというとあれだ、連作を雑誌に掲載しておいて、最後の一篇を書き下ろしにする。その一篇は、以前の話では伏せられていた事実を種明かしするための作品で、それ自体にはストーリーと呼ぶにあたいする物語がない。そういうやつ。解決篇があとから添えられた、と考えればいいのかな。ただし、それ以前の話は一つ一つが完結した形になっているので、「解決篇」の種明かしは、プロットの根幹に関わるものではなくて、判ればそれなりに楽しい、という程度のおまけなのである。

 そういうのはきっとおまけなのだ。現在の事情はよく知らないが、ひところは短篇集が売れなくて、あまり本にできなかったそうだから、雑誌連載をただ本にまとめただけではありません、ほら付加価値だってあるんです、といった感じでおまけを付けているのだろうと想像する。それ自体はいいんですけどね、ファンサービスにもなるから。

 ただし、おまけはあくまでおまけ。本篇の方がおもしろいことが最低条件だ。本篇が物足りない分を、おまけで補おうとしてくれても困るのである。短篇集であるからには、やはり一篇一篇の完成度を高めていただきたい。その上で、単行本にしたときの面つきが、本にしただけの価値があるような形であってもらいたい。そういう理想を十分に満たしているのは、たとえば山口雅也『ミステリーズ』のような短篇集だ。あれにはおまけはついていないけど、本になった形もきちんと一つの概念に貫かれた作品になっていた。まったく文句はない。昨年出た若竹七海『バベル島』などもなかなかいい。

 お察しのとおり、今まさに文句をつけたい短篇集を読み終えたものでこういうことを書いているわけだ。おまけのほうが売り物で、おまけを抜くと、少しはいいものもあるが出来がばらばらで気持ちが悪い。おまけ自体にすべての収録作の意味を塗り替えるような破壊力があればまだ救われるのだが、それほどの強さはないのである。こういう趣向を「ミステリーならでは」と称賛する人もいるのかしら。キャラメルならグリコより森永の方が好きなのだが、短篇集も同じだな。こういうおまけなら要らないや。

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