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(6/2)ミステリマガジン7月号と掘り出し物のお話。

 うっかりして今月号のことを書き忘れていた。
 HMMレビューは、マイケル・シェイボン『ユダヤ警官同盟』、P・J・トレイシー『埋葬』、デレク・ニキータス『弔いの炎』、キャロル・N・ダグラス編『ホワイトハウスのペット探偵』の四冊を担当した。『ユダヤ警官同盟』については改めて触れるまでもないだろう。スティーグ・ラーソン『ミレニアム』と同様、今年の必読本である。

 ここでは掘り出しものの二冊について書き留めておく。前後するが、まず『弔いの炎』から。表紙こそロマンティック・サスペンス風なのだが、騙されてはいけない。これは疾走する暴力小説なのだ。後半に入ってからのアクセルの吹かし方が異常で楽しめる。アマゾネス小説をお好きな方も絶対読むべきである。

 もう一冊『埋葬』は、ミネアポリスを舞台にした連作の第四弾。このシリーズは紹介のされかたが不幸だった。第一作『天使が震える夜明け』がヴィレッジブックスから出たあと、第二作『沈黙の虫たち』から版元が集英社に移った。そのため、第一作で紹介された初期設定が、以降の読者にはわかりにくくなってしまったのである。基本的には警察小説なのだが、コンピュータ・テクノロジーを駆使してネット犯罪に挑む、ハッカー軍団が警察官を補佐する立場にいる。こうした協力体制がなぜできあがったか、という話が『天使が震える夜明け』で描かれているのだ。というわけで『沈黙の虫たち』以降の作品を読む人はそういうものだと思って本を手にとってください。念のため、各作品の寸評を書いておく。

『天使が震える夜明け』連続殺人もの。四作の中ではもっとも劣る出来なので、最初に読まなくてもいいです。良くも悪くも第一作。

『沈黙の虫たち』これも連続殺人もの。ちょっとヘニング・マンケルを思わせる味があり、アイデアの突飛さが良い。脇役として出てくる弁護士が非常にいいキャラクターである。

『闇に浮かぶ牛』タイトルに負けないぐらい変な話。『悪夢のバカンス』みたい、と言ったら「ああ」と判ってくれる人も多いかも。警察小説のカテゴリーから微妙に外れるのがおもしろい。

『埋葬』これも変なお話だが、前三作に比べてテーマの絞込みが明確で、締まった出来になっている。実は、入門書としてはもっとも適しているかも。

 だいたいそんな感じ。荒削りなんだけど、個性のあるシリーズだ。警察小説ファンはちょっと気にしたほうがいいと思いますよ。


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