« (8/10)追想五断章 | Main | (8/10)次回作に期待のこと補遺(キャラクター) »

(8/10)次回作に期待の件

 ぶらぶら検索していたら、「このミス」大賞の「次回作に期待」拙稿について触れていただいているブログを発見した。賞に応募された方だと思うので、リンクはしません。あしからず。

 せっかくなので「次回作に期待」で書いたことの補足をしておきます。

 あの文章の冒頭で、私はこう書いた。
 正直申し上げて、1次選考を通過した二作の出来が飛びぬけていました。読みやすさや論理展開に配慮した構成がとられており、物語の素材についての取材が行き届いており、テーマが完全に消化されている。かつキャラクターに愛すべき点があり、作品に独自の雰囲気が備わっているとくれば、どこへ出しても文句のない作品です。残念ながら二作のレベルに一歩届かなかったものについて、ここでは紹介をしておきましょう。

 文字数が足らなかったので十分に説明できなかったが、上に挙げた事柄は、ミステリー新人賞原稿を読んで判断するときの基準を自分なりにまとめたものである。前半分が必要条件、後半分が十分条件ということになる。

 つまり、
 1)読みやすさや論理展開に配慮した構成がとられている。
 2)物語の素材についての取材が行き届いている。
 3)テーマが完全に消化されている。
 という三つの条件をすべて満たしていれば水準作であり、欠けていれば減点材料となる。落すために読まなければいけないような選考のときは、減点が少ないものを最初に合格にします。
 もちろん新人の作品だから、作品に過不足があるのは当然のことで、過剰が微笑ましいことがあれば、もう少し書いてくれていたら、と拙さを残念に思うこともある。そういうときに、減点部分を補ってくれるプラスアルファを求めるわけだ。そんなときに以下の二点が備わっていれば、無茶を承知で加点することがある。

 4)キャラクターに愛すべき点がある。
 5)作品に独自の雰囲気が備わっている。

 もちろん、1)~5)のすべてが揃った作品が候補作としては望ましいのだが、そんなものは百本読んで一本あるかないか。今回自分の箱から通した二作は、以上の五つの条件を四つずつ満たしたものだと考えている。逆に「次回作に期待」止まりとした作品は、二以下だったということですね。三の作品が無かったので、残念ながら三作目の一次通過作品を出すことができなかった。選考の経過はそんな感じでした。

 上の条件はあくまで私的なものなので、他の新人賞や他の選考委員に当てはまるものかどうかはわからない。たとえば、どんなに論理的で取材が行き届いた作品でも、キャラクターが駄目なら通さないという人もいるでしょう。私は、キャラクターを加点条件にして減点対象にはしないというだけの話である。作品の雰囲気、というのは曖昧な言い方なのだけど、文体や表現の巧拙はここに含まれると考えている。つまり、一次選考の段階では、文章が稚拙だと思うものでも、ある程度までは目をつぶるということである。読みやすければ。素材がわかりやすく表現されていれば。書き手のやりたかったこと(と読者が判断すること)が十分にできていれば。それを判断するのが「ミステリー新人賞の下読み」の仕事だと私は思っています。もちろん、普通小説の応募原稿を読むときは、違ってくる条件もありますよ。

 だいたいそんな感じ。あれだな、「このミス」大賞の一次選考委員が一人ひとりの選考基準を明らかにしたら、ちょっとおもしろいかもしれませんね。開かれた賞なのだから、そのくらいやってもいいような気がする。

|

« (8/10)追想五断章 | Main | (8/10)次回作に期待のこと補遺(キャラクター) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61260/45887717

Listed below are links to weblogs that reference (8/10)次回作に期待の件:

« (8/10)追想五断章 | Main | (8/10)次回作に期待のこと補遺(キャラクター) »