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(8/18)10%おもしろいターザン本

 仕事の合間に『元『週刊プロレス』編集長ターザン山本!の活字プロレス血風録』を読んでみた。ターザン山本!はいつもと同じことを書いているだけなのだが、インタビューが四本と関係者座談会(掘り下げが少なくてつまらない)が入っている。このインタビューのうち二本がおもしろかった。長州力と吉田豪なんだもの。あとの二本のうち金澤克彦のものはまあまあ、佐々木健介のはつまらない。この人は常識人だから、怨みもない相手にそんなかっとんだことは言わないのである。本人の責任ではなくて、人選ミスだ。

 で、長州力。最初から最後まで「なんで俺があいつのことなんか喋らないといけないんだ」「俺の言ったことは全部書けよ、書けよ。書かないとお前も取材拒否だからな(妄想)」「山本の墓にクソぶっかけてやる!(妄想)」といった苛々した感情が伝わってくる、いいインタビューだった。可笑しかったのは「もう、アイツは忘れ去ったほうがいいよ」とターザンの存在自体を全否定しながら、「山本はタコと一緒だな。自分で自分の足を食ってんだよ」と的確にその処世術を批評していたり、やけに現状に詳しい点である。

 長州 それで、博打に呆けてるのか?
 --さあ、ボクもそこまで詳しくは……。最近の山本さんのことをご存じなんですか?
 長州 いや、そういう噂なんだよ。……う~ん。他にやってるとしたら、たぶんバカなヤツらを集めての、座談会とかさぁ。腐りきったヤツだな。
 --お詳しいですね?
 長州 だから噂だよ、噂。……たぶん、本人も気づいてるんだよ。でも、この世界しか食って行けるところがないから、そういうところじゃないか? ……これだけ聞ければ、十分だろ? 俺から聞ければ。俺の口から(笑)。

 長州最高! インタビューアはいい仕事をしていると思います。

 もう一本の吉田豪インタビューのほうは安心のクォリティーで、初紹介ネタもふんだんに紹介されている。この計16ページだけが飛びぬけておもしろかったな。全体はつまらない(特に著者の文章)ので、10パーセントだけおもしろい本である。

 本文の問題点は、まず文章がブツ切れであることだ。原稿用紙10枚分の話題しか提供できず、それを超えると息切れする。雑誌や新聞の記者あがりの人の癖で、記事の長さの文章しか書けなくなってしまうのだ。若いうちには一晩に数十枚を書いたというターザン山本!氏だが、別に論理立てて一つの題材を掘り下げるような文章を書いていたわけではなくて、勢いで理屈無用のアジテーションを書きなぐっていたわけだからね(そこがおもしろかったのだけど)。大人なりの文章の書きかたを勉強しなおさないと、プロレス界の外に出て行くのは無理だと思う。

 順番無視、伏線皆無で自分の書きたいこと、思いついたことだけを書いていくスタイルなので、この文章でフィクションを書くのは難しい。私小説なら書ける、と思っているのかもしれないが、私小説だって技巧というものはあるんです(ノンフィクションだってそうだ)。『告白』とか読んでいる場合じゃない。

 真面目に本文を読んでみると、さすがに全部が錆び付いたわけではなく、公称40万部の雑誌作りに采配をふるっていた際の感覚もところどころで発揮されている。自分が去った後の「週刊プロレス」がなぜ駄目になったのかという分析も的確だ。

「真面目でおとなしい人間が、活字プロレスを誌面で展開していくのは無理だ。そうすると『週刊プロレス』の誌面は限りなく、等身大なものになっていく」
「面白いことに、試合リポートを徹夜して書いていると、みんな仕事をした雰囲気になるのだ。それは私からすると、単なるマスターベーションでしかない。試合リポートは専門誌にとってゴミだ」

 このテンションをずっと続けれられればいいんだよなあ。

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