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(9/12)黒い山

 早川書房から見本をいただいた。解説を担当したレックス・スタウト『黒い山』である。しゅえっと社の西貝マリ訳でお持ちの方もいるかと思うが(少数派だろうけど)、宇野輝雄訳で喋るネロ・ウルフとアーチー・グッドウィンをご堪能ください。

 スタウト・ファンには説明の必要もないだろうが、『黒い山』はシリーズ中の最大の異色篇である。ウルフの幼馴染みのマルコ・ヴィチッチが銃殺され、探偵自身が重い腰を挙げて西三十五丁目の我が家からモルグまで赴く、という事態だけでもかなり異例のことなのだが(ウルフは、自分が必要と認めなければ、決して外出しようとしない人間なのである。それが警察官や、検事の求めであっても)、もっと驚くべきことが起きる。マルコの死に続き、ウルフの養女までが何者かに殺害される。彼女は、ウルフたちの故郷であるモンテネグロに戻っていたようなのだ。その報を受けたとたん、アーチーも呆れるような機敏さでウルフは出国手続きを済ませ、生まれ故郷であるバルカン半島へと飛び立っていくのだ。

 モンテネグロはチトー政権のユーゴスラヴィアに属する。秘密警察の恐怖によって支配された地で、ウルフがジェームズ・ボンド顔負けの働きを見せるのである(イアン・フレミングが007シリーズの第一作である『カジノ・ロワイヤル』を発表したのは、本書と同じ一九五四年のことだ)。ただし、体重が七分の一トンにも及ぶウルフのことである。普段はまったく使っていない彼の足がそんな活動についていけるはずがない。結局ウルフは足の痛みについて文句を言い続け、アーチーを閉口させるのである。まあ、それはそうなるでしょうね。


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