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(9/24)理想主義者

 三沢光晴『理想主義者』が文庫になるので買おうと思っていたら、版元からいただいてしまった。感想を書く機会がなさそうなので、せめてもということでここに記しておく。

 これは自伝のたぐいではなく、プロレスリング・ノアを旗揚げした三沢が、社長レスラーとして団体を率いる立場から、自身のプロレス観を言葉にした本である。夢へ向かって努力する大事さを繰り返し説いているので、指南書のたぐいとしても読むことができるだろう。プロレスファンにとっておもしろいのは、ノアのレスラーが使う技について解説をした箇所だろう。投げっぱなしジャーマンの受身の取り方などが丁寧に書いてある。

 この技は攻撃をする選手の腕を放すタイミングしだいでダメージを与える場所が変わってくるという特質があるのだ。身体を反りきらないうちに離せば相手を上方に投げ、ある程度反らした状態で投げれば後頭部を叩きつけることになる。(中略)
 上に投げられるパターンを見誤り、自ら飛んで受け身を取ろうとしたなら、自らの跳躍によって増幅された高さと、身体を動かしたことによる不安定さから、何の対処もできずに頭をマットに打ちつけることになる。(後略)

 なるほど。

 こうした技術論の部分は純粋に楽しいのだが、時折哀しくなることがある。「受け身を取れなくなったらそれが辞めどき。受け身が取れているうちにはがんばらなければ」というような言葉を見ると、人はそこまでぎりぎりに頑張らなければいけないのか、と切なくなる。また、ゴールデンタイムで放映されていなくても(深夜の放映でも)試合の熱意はいずれ観ている人に届く、自分たちがプロレスを楽しんでいれば、観客にとっても満足できる試合になる、といった理想論については、まさかこのとき放映自体が無くなるという事態までは想定していなかっただろうなとか、選手が自由に振舞いすぎてマッチメイクが錯綜するようになったのは誤算だったろうな、とか、つい現状と比較してしまうのである。

 ここに書かれているのは貴い理想だ。残された選手たちには、三沢光晴の言葉をもう一度胸に刻みなおし、その偉業を引き継いでもらいたいと切に願う。


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