(10/30)問題小説
忘れていたが見本をいただいていた。
今回採り上げたのは、川上未映子『ヘヴン』、新堂冬樹『摂氏零度の少女』、綾辻行人『Another』の三冊。
『Another』についていえば、ネタばらしをしない範囲の書評では(つまり分析を主目的とした評論ではない形で)、自分で書ける最良のレベルの文章になったと思う。もし『Another』を未読で、買おうか買うまいか迷っている人がいたら、書店で「問題小説」を立ち読みしてみてください。天秤を傾けるだけの力のある文章は書けたと思う。
忘れていたが見本をいただいていた。
今回採り上げたのは、川上未映子『ヘヴン』、新堂冬樹『摂氏零度の少女』、綾辻行人『Another』の三冊。
『Another』についていえば、ネタばらしをしない範囲の書評では(つまり分析を主目的とした評論ではない形で)、自分で書ける最良のレベルの文章になったと思う。もし『Another』を未読で、買おうか買うまいか迷っている人がいたら、書店で「問題小説」を立ち読みしてみてください。天秤を傾けるだけの力のある文章は書けたと思う。
「翻訳ミステリー大賞シンジケート」の霜月蒼原稿を読むまで気付かなかったが、ドウェイン・スウィアジンスキー『メアリー-ケイト』は、二〇〇八年十一月の刊行だったか。ということは、今年の「このミステリーがすごい!」投票の対象になるわけである。うっかりしていた。あれに票を投じるべきか否か、検討しなければならない。
『メアリー-ケイト』のドウェイン・スウィアジンスキー、『死神を葬れ』のジョシュ・バゼル、『バッド・モンキーズ』のマット・ラフ。
荒らぶる魂を満足させてくれた三人の作者である。感謝。これにウェストレイクとランズデールの短篇集が加わって、ハイアセンの長篇まであった。豊饒な一年だったというしかない。
連日お知らせしている初野・真藤対談だが、おかげさまで当日申し込みの問い合わせが結構きているようで、なんとか形になるかな、というところ。池袋コミュニティカレッジという会場は、宣伝媒体がまったくない(西武百貨店内の告知しかしない)ので、周知にいつも悩まされるのである。セブンアイホールディングスの傘下に入ったのだから(入ったのです)、セブンイレブンとかに講座の申込書とか置いてくれればいいのに、というのは愚痴である。
とりあえず当日の準備を進めているが、何かこれは聞いてもらいたい、というような質問事項がある方は、このブログにコメントをつけるか、私宛にメールで質問状を送ってください。
一昨日から今朝にかけて五十枚くらい原稿を書いたのだが、おかげで睡眠のタイミングがおかしくなって、調子が悪い。不幸なことに、今朝は糖尿病内科の定期検診日だった。数値を見た主治医に叱られましたよ。やれやれ。これから年末進行が終わるまでしばらくの間は体調不良の日々が続きそうだ。
そういえば綾辻行人さんの『Another』の発売日は今日だったと思うが、さっき行った地元書店には無かったような。しっかり配本してもらいたいものである。「このミス」投票のため読み残しを片付けているご同輩、『Another』は読んでおいたほうがいいと思いますよ。
昨日お伝えした、初野晴×真藤順丈の公開対談だが、会場にはまだ余裕があるので、当日参加申し込みでも大丈夫との連絡をいただいた。ただし、13時直前に集中すると受付が集中してしまう可能性があるため、できれば12時くらいには手続きを済ませてもらいたい、とのこと。ぜひとも多数の方にご来場いただければと思います。
もう一つは藤原審爾の件である。
本日「小説推理」十二月号の見本を頂戴したが、特別寄稿として〈新宿警察〉シリーズの書誌を含む原稿を書かせていただいた。ご存じの方も多いと思うが、〈新宿警察〉は何冊本が出ているかも不明という研究未踏のシリーズである。おそらく日本でも有数の〈新宿警察〉シリーズ・コレクターと思われる川出正樹さんの力をお借りして、暫定版ながら、現時点での書誌を作成させていただいた。もっともうっかりミスを既に発見済みで、『新宿警察 その暗黒の恋』の雑誌連載情報などを書き漏らしている(前号で細谷正充さんが触れておられるので、ご参照ください)。そういう意味では不完全極まりないのだが、これを叩き台として完全版作成に挑む方が現れれば、藤原審爾ファンとしては望外の幸せである。とりあえずご一読ください。
なお、前号に掲載された細谷正充さんと池上冬樹さんの原稿は、双葉文庫『新宿警察』『慈悲の報酬 新宿警察2』の解説としてそれぞれ収録されている。
ここのところ「翻訳ミステリー大賞シンジケート」のお仕事にかまけて、すっかり告知を忘れていたのだけど、11月1日の日曜日に、池袋で初野晴さんと真藤順丈さんの公開対談講座を企画しています。私、司会です。日本ホラー小説大賞と横溝正史ミステリ大賞受賞者の対談ということで、一種の角川対決ですね。
会場となる池袋コミュニティカレッジに問い合わせてみたところ、まだ空席がだいぶあるとか。たいへんだ。特に初野さんは、遠方からはるばるいらしていただくのに。そんなわけで、日曜日の予定がまだ空いている方、予定はあるけど、午後一番のその辺の時間は暇だ、という方、池袋まで足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。えーと、たぶん事前申し込みがいるのだと思うけど、今から連絡して事前予約の当日申し込み可の形に変えてもらっておきます。よろしくお願いします。
詳細はこちら。
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杉江松恋と新人賞受賞作家
対談 創作闘論!
横溝正史ミステリ大賞受賞者初野晴氏、日本ホラー小説大賞受賞者真藤順丈氏をお招きし,第一線で活躍中の評論家杉江松恋がミステリの創作法、ストーリー発想の秘訣について熱い討論を繰り広げます。
【曜日・時間帯】 日 13:00〜14:30
【開講日・回数・受講料】 11月1日 1回
会員 2,100円
一般 2,310円
●資料代実費
(以下の方が対談に参加されます) ■初野晴 静岡県清水市(現静岡市清水区)出身。法政大学工学部卒業。2002年、「水の時計」で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。ファンタジーとミステリを融合した独特の世界観で注目を浴びる。著書に『漆黒の王子』『退出ゲーム』『トワイライト・ミュージアム』など。最新刊は『退出ゲーム』の続編の青春ミステリ『初恋ソムリエ』。
■真藤順丈(しんどう・じゅんじょう) 1977年東京都生まれ。2008年『地図男』で第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞してデビュー。『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞、大賞。2008年主要新人賞四賞受賞の快挙で、一身に注目を集める。
本日の読書欄で「「愛」は出版を救うか 翻訳ミステリー大賞創設」として、大賞とシンジケートサイトが紹介されました。記事を書かれたのは文化部・柏崎海一郎さん。
ありがとうございます。
翻訳ミステリー大賞のことが、十月二十一日の夕刊で記事として紹介されたそうである。
ネット上ではこちらでご覧になれます。
この件の取材は、どのような媒体であっても受ける予定なので、気軽にお声がけください。
忘れていたが、先週号に東野圭吾『新参者』の書評を載せてもらっていたのだった。風邪で倒れたり、仕事が立て込んだりで、アナウンスの機会を失ってしまった。
SPA!の書評は、通常は文庫本を対象とし、何か注目すべきものが出てきたときだけそれ以外の版型も、というお話になっている。版元で自信作を持っている方はぜひご一報ください。
先週の〆切ラッシュを切り抜け(一日に原稿用紙換算で三十枚ぐらい書いた日もあった)、なんとか週末を迎えた途端に、高熱を発して床に就いた。すわ、新型……ということで家族からは隔離してもらい、三階の布団で寝たきり生活である。病院に電話してインフルエンザの検査をしてもらおうと思ったところ、発熱後六時間経たないと陽性かどうかの判断がつかないという。仕方ないので、六時間寝て過ごす。ものすごく辛かったのだが、これが終わればタミフルタミフルとそれだけを心の支えにして乗り切った。
午後四時、三十九度の熱を押してタクシーで病院へ。なにしろタミフルのためである。具合悪くなりながらも検査を受け(あれはちょっと涙が出る)、十分待って結果を教えてもらったところ、医者が意外な言葉を。
「陰性ですね」
聞けば発熱から六時間ではなく十二時間経たないと結果が出ない場合もあるという。せ、せっかく来たのに。泣く泣く頓服だけを貰って帰宅。体調は依然として最悪で、頓服を飲んでも八度台からは下がらない。一晩寝て、朝一番で医者に行こうと決め、就寝。
発熱二日目。熱は少し下がって八度台ぎりぎり。しかし頓服は飲んでいるわけで安心はできない。というわけで再び車上の人になって病院へ向かった。二度目の検査(やはり涙が出る)を終えた医者の言葉は、
「陰性ですね」
ととということは、やはりタミフルはもらえないわけですか。本当なら喜ぶべきことなのだが、一発で治る薬がもらえないとなると、がっくりきてしまう。やむをえず抗生物質を貰って帰途についた。
そして発熱三日目。本日。おお、喉の痛みが引き気味で、熱も七度台を割るくらいまで落ちた。医者の言うことは信用するものである。検査の結果というのはやはり正確だ。そんなわけで今日一日安静にしていれば、体調は回復すると思います。もろもろご心配、ご迷惑をかけておりますが、もうちょっとだけご勘弁を。
忘れていたが、先週のパーティで見本をいただいたのだった。
今回の「迷宮踏査」は、ハーバート・ブリーンを採り上げています。この連載のために『あなたは酒がやめられる』を買って読んだのに、ちっとも止められませんよブリーン小父さん!
原稿用紙にして三十枚相当の文庫解説をただいま脱稿した。解説の枚数は十枚程度が普通で、私はよく枚数を逸脱して三十枚くらいは書いてしまうのだが、初めから三十枚と言われた原稿は初めて。それだけに書くのは楽しく、楽しいのだが辛く、辛いところもまた楽しく、つまりはとっても充実した日々を送りながら原稿を書いた。書けば書くほどその小説が好きになる、幸せな体験をさせてもらったのである。ありがとう、ありがとう。
まあ、原稿の出来のことは言わないでください。今は幸せだとだけ書いておく。多幸感、飲みに行っちゃおうかしら(と書くと激怒する人がいるはずだから行きません)。
でも今日は池袋で講師を務める日なのであった。
翻訳ミステリー大賞シンジケートの一昨日の記事、「北上次郎の質問箱」をお読みになりましたか? 読んだ人は結構驚かれたと思う。池上冬樹さんが絶賛された作品について、えー、あんなのがおもしろいんだ、どこがおもしろかったのか私にはわからなかったんですけど、と北上さんが質問する内容なのである。実際の書き方はもっと紳士的だけど。
誤解なきように記しておくが、北上さんの意図は、書評家のセンスについて掘り下げた議論をすることにある。そのための「質問」なのである。もちろん、書評家のセンスは各人が異なるものを持っている。それを「価値観が違うよねー」「人それぞれだよねー」と言っているだけでは、あまりおもしろくない。あえて踏み込んだ議論を行い、そのやりとりを通じて生まれるものがあることを期待しているわけである。もちろん池上さんを一流の書評家として信頼しているからこその質問だ。信頼しているからこそ、判らないことは聞きたくなる。
北上さんから執筆の打診をいただいたとき、これは波紋を呼ぶかもしれないなと思いつつも、是非とお願いした。できれば毎月書いてもらいたいのだが「質問したいことがあるときは書けるけど、それ以外は無理だよ」とのこと。それも当然なので、不定期連載にしたのである。しかし、できればやはり沢山書いてもらいたい。なんだったら、北上さんだけではなく、他の方が手を挙げていただいてもいいのである。逆に「北上さんのこの書評がよく判らなかったんだけど」という書評家・評論家がいたら、質問の場を提供するので私にご連絡ください。それが有意義な議論になるのであれば、北上さんも快く回答してくださるものと思う。あ、私も質問上等です。どうぞどうぞ。
そんな感じで、ミステリー書評に関する風通しのいい議論が広がっていくといいと思っているのです。
今出ている「CIRCUS」という雑誌が、巻頭で「今、最高に面白いミステリー」という特集を組んでいる。普段のカラーとはまったく違う特集なので、話を聞いたときには正直意外な印象だった。各方面の著名人に好きなミステリーについて質問するなど、専門誌ではなかなかできない記事もあり、内容はなかなかおもしろい。「ミステリートリビア」のコラムに「探偵事務所の机の素材は大体が「フォーマイカ」」などと首をひねりたくなる記事があるのは「それは単なる雑学じゃないか」と思ったのだが、大勢に影響はないでしょう(『六角館の殺人』にはちょっとびっくりしたが)。
私は「ミステリー3賢人が選ぶこのトリックがすごい!BEST10」というページに顔を出しています。どうでもいいけど、凄い称号だな。他のお二人は、元東京創元社社長の戸川安宣さんと、早川書房の川村均さんである。凄い、と思ったトリックをネタばらし無しに説明する、というのが大変だった記憶がある(構成してくれたライターさんのおかげでなんとかなっています)。私が上げたのは、ほとんどが「犯人の作為」によるトリックなのだが、戸川さんはそうした点に構わず意外性のあるものを上げておられる。川村さんは、私と戸川さんの中間という感じだろうか。非専門誌の読者向けということで、三人ともマニア度は比較的低めです。私も『魔女が笑う夜』を上げようかどうしようか悩んで止めたのだった。
昨日は綾辻行人さんにお会いし、新刊『Another』についていろいろお話をうかがった。インタビューア特権で、新着の束見本も見せていただく。おお、厚い。そして、軽い。「野性時代」で三十回にわたって連載された小説なので、当然分量は多く、ページ数もあるのだが、それを感じさせない本の重量であった。造本マジックだ。内容も、マジックのようにおもしろいので雑誌連載を読んでいなかった方は期待していいと思います。すばらしいページターナーぶりで、綾辻さんの新しい代表作となることは間違いない……などと熱く語っていたら、「いやいや、褒め殺しはそのへんで」と軽くいなされたのであった。いえいえ、過褒ではなくてですね。
そんなこんなで水漏れショックのことも忘れて強く明るく生きております。
では。
早暁妻が、居間として使っている二階の床が水浸しになっていることを発見。家族総出で対応に追われた。
豪雨による雨漏りなのだが、最上階でもない二階がなぜ、と首をひねる。
しばらく探索した結果、三階にある張り出し部分の排水口が詰まり、プールのようになっていることが判明した。ああ、これか。目詰まりを直し、ついでに屋上にあがってそっちの排水口も確認した。水がたまりかけていたので、こちらは間一髪セーフだった(書庫のある一階は幸い被害に遭わなかった)。この台風でもっと被害に遭われた方もいらっしゃるはずである。おこがましい物言いですが、どうかお気を落さず。お見舞い申し上げます。
そんなわけで午前中は仕事になりませんでした。こんなところで言い訳をしても仕方ないが、午後から営業開始である。今から都内某所に綾辻行人さんのインタビューをしに行ってきます。原稿もろもろはそれ以降の予定。
すでにご存じの方も多いと思うが、CS局「ミステリチャンネル」が「AXNミステリー」へと名称変更した。
それに伴い、情報番組「ブックナビ」も「BOOK倶楽部」になった。
出演者は以前と同じだが、国内・海外で二点ずつ選んでいたイチ押し本が、合わせて一冊になった。また、新刊紹介以外のトークコーナーも増え、テーマトークをする時間もできた。一回目は「シャーロック・ホームズ」について語り合ったのである。ホームズについて語れ、と言われましても。一応「語った」のだが、シャーロキアンの方からどういう反応があるか、ちょっと心配である。
ちなみに、イチ押し本のコーナー(参ったと言わせた作品ということで、マイミスと言うらしい)は、ネットで配信されています。ここの「動画」というところから視聴できるので、関心のある方はどうぞ。香山さんと大森さん、私のイチ押し、じゃなかったマイミスの中で、どれを読みたいと思ったか、というネット投票もできる。よかったら投票してみてください。
なんと権田萬治さんが寄稿してくださいました。
権田さんに書いていただいた「なんでもベスト5」の原稿はこちら。
サイトを立ち上げる際、事務局の本気度を示すために最初はなるべく外部の方に原稿を依頼しようと考えたのであった。その際、最初に名前があがったのが権田さんである。突然のお願いにもかかわらず、快く執筆を承諾してくださった権田さんには心より感謝申し上げます。
ところで、その権田さんはホームページを作り、頻繁に日記をつけておられる。九月九日の記述に気になるくだりが。新潮社から刊行されて、第一回本格ミステリ大賞を評論部門で受賞した『日本ミステリー事典』は、現在絶版になっているが、その次の展開を望む声があり、水面下で動き始めていた。といっても、動きがあったのは二年前までで、以降はぷっつりと音沙汰がなくなってしまった(入院していた池尻の病院で、ベッドの上でゲラに朱入れまでしたのに!)。どうなっているのか心配していたのだが、どうやら再始動することになりそうなのである。詳しくは権田さんの日記で。
情報解禁になったのでお知らせします。北上次郎さんと田口俊樹さんの公開対談で、私が司会を務めます。関心がある方は、下記のリリースを参考に申し込みしてみてください。
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「翻訳ミステリー大賞」創設記念
「今年の翻訳ミステリーはこれを読め! 読めばわかるさ!」座談会
司会:杉江松恋(ミステリ評論家)
パネル:田口俊樹(翻訳家)、北上次郎(文芸評論家)
■2009年10月21日(水)19:00~
■会場:青山ブックセンター六本木店
■電話予約&お問い合わせ電話
青山ブックセンター六本木店 03-3479-0479
■受付時間: 月~土・祝 10:00 ~ 翌朝5:00
日 10:00 ~ 22:00
(※受付時間は、お問い合わせ店舗の営業時間内となります。御注意下さい。)
■受付開始日:2009年10月8日(木)10:00~
<イベント内容>
翻訳者の投票によって決まる「翻訳ミステリー大賞」が本年度よりスタートするのを記念して、賞の発起人で翻訳家の田口俊樹さんと文芸評論家の北上次郎さんが、今年の話題作を縦横無尽に語ります。司会は、バカミスの泰斗として名を馳せる杉江松恋さん。
それぞれ嗜好の異なる三氏がどの作品に言及するかによって、年末の各社ミステリー・ランキング、初代の翻訳ミステリー大賞の行方が左右されるのか? されないのか?! 当日は、北上氏、田口氏によるオリジナル原稿を掲載したおまけパンフレットの配布もあります。
たくさんの皆様のご参加をお待ちしています。
店内でのイベントです。ほとんどの方は40~50分のトークをお立ち見となります。ご了承ください。
参加は無料ですが、ご予約を承ります。
<ご参加方法>
2009年10月8日(木)朝10時より、青山ブックセンターの店頭もしくはお電話で、参加受付をいたします。
トーク終了後にサイン会がございます。イベント当日、田口俊樹さん、北上次郎さん、杉江松恋さんの著作、翻訳本をお買い上げの方に、レジにて整理券を差し上げます。
<プロフィール>
田口俊樹(たぐち・としき)
1950年東京生まれ。出版社勤務、児童劇団スタッフ、都立高校教員を経て『ミステリマガジン』(早川書房)から翻訳家デビュー。おもな翻訳書に『八百万の死にざま』(ブロック、ハヤカワ文庫)、『チャイルド44』&『グラーグ57』(スミス、新潮文庫)、『マイケル・ジャクソン 仮面の真実』(ハルパリン、早川書房)など多数。
北上次郎(きたがみ・じろう)
1946年東京生まれ。1976年、椎名誠氏と『本の雑誌』を創刊。現在同誌顧問。文芸評論家。おもな著書に『エンターテインメント作家ファイル108<国内編>』(本の雑誌社)、『読むのが怖い!』シリーズ(大森望と共著/ロッキング・オン)などがある。
杉江松恋
1968年東京生まれ。ミステリ評論家、文筆家。おもな著作に『口裂け女』(富士見書房)、『これだけは読んでおきたい名作時代小説100選』(アスキー新書)などがある。
「週刊文春」の件、もう少し。
しばらく見ないうちに、高橋春男の絵が猛烈に劣化していることに驚かされた。「竹ペン」のような線になっているし、人物の輪郭もガタガタ。メインキャラクターの顔は『おそ松くん』方式で入れているのだろう(それが何かは各自調査)。どうしてしまったのか。漫画家としては、相当危ない水位まで画力が落ちているように思う。
気になった記事は、徳岡孝夫さんの寄稿である。そうか「諸君」連載の「紳士と淑女」は、徳岡さんが書いていたのか。勉強不足で知らなかった。鋭い筆鋒で気持ちよく、諸事を俎上に載せる際の感覚が公平である。今回の寄稿でも、鳩山由起夫に関して書いた箇所がおもしろかった。美濃部亮吉が都知事に就任した際の周囲の狂奔ぶりを例に引き、こう呟くのである。
――私は大記者団の中に坐って質疑を聞きながら、「よーやりはるわ」と思いました。大阪弁にあって標準語にない、この「してはる」という完全な傍観者の態度。ジャーナリズムにはもう少し必要なのではないでしょうか。
なるほど。感心したので『完本 紳士と淑女』を購入して読んでみることにした。
もう一つの話題は、プロレス専門誌「Gスピリッツ」の特集記事である。プロレスに関心のない方はすまぬ。同誌最新号は急逝した三沢光晴選手の特集を組み、いかに故人が技術に長けていたかという点について、主に「受け身」の面から分析している。視点がおもしろく、読み応えのある一冊だ。その関連で「受け身」特集を組んでおり、こちらには三沢選手と直接関係のない話題も紹介されている。目を引いたのは、TAKAみちのく選手のインタビューである。TAKA選手はデビュー前、ディック東郷選手から受け身の指導を受けた。そのやり方が、非常におもしろかったのである。
――ディック東郷の凄いところは、一番最初に痛いのをやっちまおうって感じで、いきなりトップロープに上ってドカーンと、セントーンで落ちるんです(苦笑)。これはスゲエ痛いですよ。で、細かいことは教えない。とにかく”やれ!”と。それで何回かやってると、痛い時と痛くない時があるわけですよ。それで体で覚えていくんですよね。(後略)
これって、小林まこと『12の三四郎』そのまんまじゃないか。ディック東郷が真似をしたのか、それとも漫画のほうが実際にある練習方法に取材したのか(プロレスにも『12の三四郎』にも関心がない方はすまぬ)。
漫画の内容はこうだ。高校を卒業して悪役レスラーの桜五郎の弟子となった東三四郎は、ある日、リングに上がって受け身を取ることを命じられる。もともと柔道をやっていた三四郎は当然受け身を取れるのだが、桜五郎の言うプロレス式の受け身とはそういうものではない。コーナーポストに上がり、「飛び落ちる」ように命じるのである。
「いいかー。同じところからばっかり落ちていると、そのうち穴が空いちまうからな。まんべんなく落ちて、体を痛めつけるようにするんだぞ」(台詞うろ覚え)
ほら、おんなじだ。ちなみにセントーンとは、コーナーポストに上って飛び、リングに寝ている相手の上に、背中から落ちる技である。下に誰もいなければ、当然痛いわけだ。
ディック東郷すごいな、プロレスラーはやっぱり偉い、と感心させられたのだったのだった。
うっかりしていたが、今出ている号の「文春図書館」に書評を掲載してもらっています。本は9月25日のエントリーでもお薦めしていた、志水辰夫『つばくろ越え』。
「文春図書館」の文字数では書ききれないことを書きたくなって、あのエントリーを上げたのだった。先週の池袋コミュニティカレッジの講義でも、受講者の方にお薦めしてきました。これはもっともっと多くの読者が手に取るべき本だと思います。
本日は朝一番で町会の少年部打ち合わせ、それが終わって区の小学校PTA連合の研修、最後に明日に迫った地域のお祭りの最終準備というスケジュールでした。
主催者が違うから、ときどきこういう惑星直列のような並び方をしてしまうのである。ついでにいえば、出席こそしないが、小学校に附属している幼稚園の運動会でもあった(本日は都内でいちばん運動会の予定が入っている日だと聞いていたが、みなさんの学校ではいかがでしたでしょうか)。おもしろかったのはPTAの研修で、自民党政権が倒れたものだから、教育委員会もこれまでの施策が引っくり返る可能性が出てきて、あたふたしている。民主党のマニフェスト通りにいくと、教育基本法を改正し、教育委員会を廃止することになる。教育指導委員会(だっけな。うろ覚えです)が新たに設立され、各校には学校理事会なるものが置かれるのである。この理事会は、学校長に命令する権限を持つ。つまり学校長が最高責任者ではなくなるわけだ。理事会には当然PTAや地域住民も参加するので、今以上に保護者との連携が強まるはずである。学校を教育サービス機関と見なせば、正しい方向性なのだが、一方で学校には周囲の声を気にしない教育理念を持ってもらいたいという声もあるはずだ。着地どころが見ものである。電子黒板の廃止ぐらいでおたおたしている場合じゃないですよ(ニュースで見たが、あれはいらないだろうと思った。一台七十万円もするらしいし)。
ただいまネットのニュースで、オリンピック開催地選びに東京が落ちたという報を知った。安心したので寝ます。北京でやったばかりなのに、よもや同じ極東の地(欧米人の意識なんてそんなものだろう)に権利を与えるなんてことは万に一つもないだろうと思ってはいたのだが、やはり正式に決まるまでは心配で心配で。驚いたのはシカゴが真っ先に落選したことで、オバマ就任のご祝儀でもう少し粘るものだと思っていた。
IOCでのプレゼンテーションでは、環境に配慮した大会開催をアピールしていたらしいが、本当に配慮するならオリンピックなんて開催しないことがいちばんなのである(南米大陸で最初の開催ということでリオデジャネイロに決まりそうな気がするのだが、アマゾンの森林伐採がさらに加速する原因になりそうで、それだけが心配)。たしかにオリンピック開催となれば建築受注が増え、景気回復につながるかもしれないが、それは一時的なカンフル剤にすぎないだろう。だいたいインフラ整備が完了した東京都で、さらにハコモノを追加建設する必要があるとはまったく思えない(現在建築中の環状道路をオリンピック用に準備しているように説明した資料を見たことがあるが、環状道路の整備計画自体はオリンピック誘致計画が生じるはるか前からあったはずだ)。一度しか使わない施設のために無駄金を注ぎ込む必要はないし、その余裕もないはずだ。下手したらオリンピックの経済効果とやらで潤される前に、都政自体がパンクするところだった。危なかった。IOCは本当にいい仕事をしてくれたものだ。いや、ジャップのことを考えてそうしてくれたわけじゃないだろうけどさ。
なんにせよ、よかった。あとは石原都知事の去就だけが問題だ。もういいでしょう。花道を飾る一世一代の舞台がなくて不満かもしれないが、そろそろ退け時だ。でも、そのあとってやっぱり舛添なの?
本日午前0時に翻訳ミステリー大賞シンジケートの第一回原稿をアップした。最初の一発は北上次郎さんの本年度ベスト10である(ただし、まだ変動の余地はあるので暫定版)。
昨日は第五十五回江戸川乱歩賞の授賞式に行ってきた。初めて書いた小説『プリズン・トリック』で受賞を果たした遠藤武文さんはなかなかの強心臓で、なんと受賞者スピーチで現在執筆中の第二作の宣伝をやってのけた。前代未聞である。その調子で、どんどん書きまくってください。
授賞式の二次会は関係者が集まり、同じホテルの別室で行われた。今年で選考委員を外れる大沢在昌前理事長が鬼軍曹となって歴代受賞者に活を入れれば、東野圭吾理事長がそんなに萎縮するなと鼓舞するというコンビネーションを見せ、なかなかおもしろい会となりました。そういえば私も何かスピーチをしたような気もするが、まあ、その場の座興ということで。