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(1/24)おおらかだったころ

 昨日古書店で購入した常盤新平『ブックス&マガジンズ』(サイマル出版会)を読んでいたら、なかなか大胆なことが書いてあった。常盤さんは一九五九年から一九六九年まで早川書房に在籍していた。その間の失敗談である。誤訳が問題になって、本が絶版に追い込まれたことがあったというのだ。曰く、

 ――ハヤカワ・ミステリの編集担当は私一人である。『デルチェフ裁判』は定評のある訳者の仕事だったので、私は原稿を読むこともせず、製作担当者にわたした。それが失敗だったのである。本になってから、誤訳を指摘する読者の手紙が何通か来た。早川書房の本をよく書評にとりあげてくださる評論家から、はじめからまるで意味が通じないと言われた。社長の早川氏からだいぶ叱られた。

 それで絶版である。あっけらかんと書いてあるが、何がまずいって編集者が上がってきた原稿を読んでいないことが一番まずいことは言うまでもない。この月、ハヤカワ・ミステリは十三点もの新刊があったそうで、それを常盤さん一人が担当していたのだそうだ。すごいことをしていたんだなあ。でもノーチェックでスルーというのは今なら考えられない事態である。

 調べればすぐわかってしまうことなので書くが、『デルチェフ裁判』の訳者は森郁夫だ。ヘンリー・スレッサーやクレイグ・ライスなどの訳書があり、軽妙な感じで私は好きだった。アンブラーとはよほど相性が悪かったのか。機会があったら読み返してみたいと思う。

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Comments

『デルチェフ裁判』は昨日6/5読み終えましたが、確かに本の冒頭から意味がわかりにくく、たぶん誤訳だろうなあという文章が多々出てきます。そして当時の政治状況とアンブラーのスタンスがよくわからず、物語の謎とあいまって二重三重の迷宮の中で不可解な感慨をいだく作品でした。

Posted by: マスカレード0 | June 07, 2015 at 03:42 PM

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