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(2/19)第十一回大藪春彦賞の選評が凄すぎる件

「問題小説」三月号に掲載されているのでぜひご覧いただきたい。同賞は本年で第十一回を迎えた。今回の受賞作は樋口明雄『約束の地』、道尾秀介『龍神の雨』の二作で、他の候補作は沢村凛『脇役スタンド・バイ・ミー』、百田尚樹『風の中のマリア』、誉田哲也『ハング』(徳間書店)の三作だった。現在の選考委員は、逢坂剛、志水辰夫、真保裕一、馳星周の四名。いや、この四人による選評が凄いのである。何が凄いかというと、きちんと読んだ上で、作品の短所を的確につく、極めて辛口の論評になっているという点。プロの作家に授与される文学賞は他にもあるが、選評を読んでいて首を傾げたくなることもある。特にメジャーなあの賞ね。しかし大藪賞は違う。どの選考委員の評価も極めてもっともである。これには候補作家も頷くしかないのではないか。

 まず気がつくのが、今回の同時受賞という結果が選考委員にとって「甲乙つけがたい作品だからどちらも受賞」なのではなくて「消去法によって二つ残って落選作を決めかねた」結果であったらしいということ。馳星周の選評がのっけからその気分を伝えている。

 ――できれば受賞作はなしにしたい、というのが本音だった。しかし、若手の背中を押してやることもこの賞の存在理由なのだと言われれば、わたしに反論の言葉はない。だから、重い気分で選考会場に赴いた。

 それゆえに、各作品への評価も熾烈を極めるものとなった。落選作について、以下抜粋を示す。なるべく選評の中核となるような文章を抜いたつもりだが、ぜひ原文をご確認いただきたい。

・沢村凛『脇役スタンド・バイ・ミー』(連作集)
「五作目まではおもしろく読んだが、なぜか六作目でいきなり作り物めいた展開になり、エピローグにあたる最終作で結構が崩壊した」(逢坂)
「ありふれた日常から、このような事件をすくい取ることのできた作者の力量は大いに評価したい(中略)終章のまとめも取ってつけた感じで、腑に落ちる内容とはいいがたい」(志水)
「(前略)作者には、文章力がある(中略)が、まとまりすぎていて、驚きがどこにもない。各話もすべて収まるところに収まってしまい、心に残るものが薄い」(真保)
「最終的にこの形に収めることには無理があったと思う」(馳)

・誉田哲也『ハング』
「筆力があるだけに、その才の切り売りを惜しむ。ホラーでもないスプラッタでもない、そして今風の若者の崩れた会話に頼らぬ、本格的なサスペンス小説を期待したい」(逢坂)
「確実にうまくなっているし、読むものを巧みに引きこむストーリーテラーとしてのセンスにも恵まれているのに、構成が乱暴すぎるのだ。書き飛ばしの域を出ていないのである」(志水)
「『ハング』が候補になったのも、版元が主催する出版社の作品という不運なのだろうと思いたい(中略)たとえ手慰みの作品で、候補に挙げられたこと自体が不本意でも、細部に手を抜かずに書いたものであるなら、もっと評価は得られたはずだ」(真保)
「(前略)選考委員という立場になければ途中で読むのをやめていただろう(中略)この作品を担当した編集者は糾弾したい。あなたは小説家と一緒に戦う覚悟があるのか? あるのならば、なぜこんな作品をゆるしたのか?」(馳)

・百田尚樹『風の中のマリア』
「〈スズメバチの生態と一生〉という、ノンフィクションノベルとして読むのならば、この小説は格好のガイドブックになるだろう。惜しむらくは、それ以上でも以下でもない」(逢坂)
「(前略)擬人化はやむを得ないとして、寄りかかり方が安易にすぎ、興を削がれるところが少なくなかった」(志水)
「そこにゲノムを理解したうえでの人間の視点が垣間見え、与えられた台詞を語る虫たちの存在感のなさが気になってしまった点だ」(真保)
「蜂の一生は三十日で終る。とても短い。それはいいが、スズメバチがそんなことを認識、思考するはずがないではないか」(馳)

 どうです、この一刀両断ぶり。そして作品の急所を確実にとらえる批評の確かさ。信用できる読みとはこういうことを言うのである。受賞作についての評価は、ぜひ本誌を読んで確認されたい。





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Comments

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