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(2/21)マイケル・シェイボンとS・S・ヴァン・ダイン

 全日本大学ミステリ連合で急遽読書会を開くというので覗いてきた。課題作はマイケル・シェイボン『シャーロック・ホームズ最後の解決』、『ユダヤ警官同盟』の作者が手がけたホームズ・パスティーシュの佳品である。

 あの小説には、殺人事件とは別にもう一つの謎が呈示されている。そちらの方は最後まで明確な形では解が示されていないので読後非常に不安になるのだ。うー、誤読しているんじゃあるまいか。気になったのでこちらで、海外の書評なども検索してみた。結論としては自分が納得するような解を示してくれるものはなかった(ネタばらしになるから当たり前なんだけど)。ちょっとおもしろかったのは、ニューヨーク・タイムスの書評である。いきなり「探偵小説の読み方はS・S・ヴァン・ダインが一九二八年に制定した探偵小説二十則によってルール上の拘束を受けている(大意)」なんて文章から始まるんだもんな。なぜそこから始める。ヴァン・ダインのアレは権威主義というか「オレ偉い」主義というか、微笑ましい自意識によって支えられている代物であるわけだが、それにシェイボンの稚気に満ちた小説をぶつけるという試みなのである。書評としては遊びが多いよね。

 読んでみると、ヴァン・ダインの第十六則が引き合いに出されていて、急に気になってくる。ええと、それはなんでしたっけ。故・中島らもが戯曲で「七福神の名前を相手に全部言わせて不安にさせる攻撃」というのを書いたそうで、ええと弁財天に毘沙門天と、と挙げていって六人目から後がいえず「うう、なんだったかいのう」と頭を抱えさせるものだという。それと同じで、ヴァン・ダインの二十則を全部言わせる攻撃が成立するかもしれない。「ちゅ、中国人を出してはいけない」「それはノックスのほうだ!」とか。

 そんなことを思った土曜日の昼下がりでした。



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