(2/9)集合知について考えているんだけどあまり芳しくない
ブログを以前から見ている方はご存じかと思うが、私は小説家にインタビューをするとき、たまに質問項目を募集することがある。自分では思いつかない質問が出てくるか、という欲目よりも、その作家のファンにとって聞きたいこと、聞けたら嬉しいことはなんだろう、という関心が先に立っての行為である。インタビューって話の組み立てが大事だから、あえて自分の聞きたくないことを混ぜる必要はないのだ。でも多くの人から「●●さんの好きな色はなんですか?」という質問の声があがったら、自分ではまったく興味がないことでも、ちょっと聞いてみたくなるでしょう。つまりそういうことだ。
でも、実際はほとんど質問が寄せられることはないのである。このブログを見ている人がそんなにたくさんいないからかな、と思っていたのだが、母集団の数が問題ではないのかもしれない、ともこのごろ思うようになった。それは「あえてネットという媒体を通じてやりとりするような情報ではない」のかもしれない。ネット上では、すごく扇情的であるか、確実に報酬が得られる(自分の質問が誌面に載る、というような間接報酬ではなくて、何かがもらえる、というような直接の報酬)というようなわかりやすいことにしか返信がないのだ、たぶん。言うまでもなく、これは中川淳一郎の本を読んだ影響である。ネタとしておもしろいからコメントする、というのもあるか。ネット上で知見を募ろうとしたら、どきどきわくわくするか、得をするか、笑えるか、しないと人は動かないということだ。
●●ファンサイト、みたいなところで質問を募れば、また事情は違うのだと思う。もともと●●に関心を持つ人が多く集まっている場所なのだから。情報収集の方式としては正しいのだけど、でもそれは私が思っていた趣旨とは違うんだよな。そういう場所で上がる声の内容には予想がつけられるからだ。もっと出会い頭にぶつけられるような質問を求めているのである。ファンのフィルターがかかった目や、書評家として作品を読んでいる私の視点からは想像もつかなかったような、素っ頓狂な質問が。そういう「王様は裸!」みたいな悪戯小僧の声をインタビューに織り交ぜられたら、本望である。出ないのも無理はないか。
まあ、そんなわけで、今のところインタビューは自分ひとりの努力でなんとかやっている。それが当たり前なんだけど。努力して自分の中で「うちなる悪戯小僧な私」みたいなものを出現させて、質問項目を考えているわけである。インタビューでお会いするみなさん、私が突然変なことを口走ったら、半ズボンを穿いた悪たれが言ったものだと思っていただきたい。
で、今週は道尾秀介さんのところにインタビューで伺う予定だけど、何か聞きたいことはある?
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Comments
本が読めれば満足しているから、
それ以上の要求はありません。
いろんな発信をなるほどと感心して満足しています。
いちいち反応していたら身が持ちません (^_^.)
反応のなさに心配する必要などないと思いますよ。
好きなようにお書きください。
それを楽しく拝見しています。
Posted by: しぇんしぇい | February 09, 2010 02:08 PM
>しぇんしぇい様
コメントありがとうございます。
反応がないのは別に構わないのですが、「なぜ無いか」だけ納得できればそれでいい感じですね。ここを人が見ていなくて反応がないのだ、とか、見ているけどつまらないから反応するまでもないのだ、とかいちいち納得したいのです。自己満足の関心ではありますね。
Posted by: 杉江松恋 | February 09, 2010 04:09 PM
「好きな短篇小説は?」というのはどうでしょうか。
よく作家へのインタビューで、「好きな小説は?」というのを見かけますが、返ってくる答えは長篇が殆どじゃないですか。だからあえて「短篇」、と指定するのは面白そうだなと思いました。
反応がないとはたぶんシンプルに面倒だからだと思います。最近はコメントを書くようになってきましたが、よく見る(三日に一度くらい)ブログとかでも半年くらい前まではコメントをしたことが一度もありませんでした。はっきりとした記憶はありませんが、面倒だったからというだけだと思います。読むのはぼーっとしていても(ある程度は)大丈夫ですが、書くとなると嫌でも頭を使わなくては書けません。頭を使う=面倒、となるのだとわたしは(勝手に)思い込んでいます。
Posted by: save | February 09, 2010 08:24 PM
>saveさん
コメントありがとうございます。面倒、そうか面倒かー。そういう解も頭の隅にちょっとあったけど、正論すぎてあえて言い出せませんでした。そりゃそうだ。面倒さを上回るような利益がないと行動は起こさせられないですよね。
短篇限定の質問、おもしろいです。それはいいですね。これは、と思う作家にはぜひぶつけてみたいと思います。もちろん道尾さんにも。ありがとうございます。
Posted by: 杉江松恋 | February 09, 2010 08:33 PM
こんにちは。
どうにかして道尾さんのブサイクな一面を聞き出して欲しいですね。本ミス大賞とった頃から、どんどん遠くなっていくような悲しみが……、あるので。「初代ガンダムが最高っすね」みたいな回答が引き出せるなら何でも。……すみません難題ですね。
ところで、反応がない、のは日本人的な(というと雑に紋切り型ですが)消極性が一番の要因では? なんて思いました。雑談程度のコメントでも、ポストボタンを押すのって精神力使うんですよね。勇気絞らないと。
Posted by: ユウキ | February 10, 2010 01:09 AM
>ユウキさん
コメントありがとうございます。
ブサイクな一面ですか。表現はアレですけど、要するに人間味のある回答が欲しいということですよね。ヒューマン・インタレステティング・エピソードというやつだ。ちょっと考えてみます。ありがとうございます。
消極性というご指摘はなるほどでした。たしかにそれはそうなんですよね。
Posted by: 杉江松恋 | February 10, 2010 05:16 AM
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Posted by: free music downloads | February 27, 2015 03:56 AM