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(4/23)アガサ・クリスティーの私的ベスト10

 今週号の週刊SPA!にアガサ・クリスティー&ジョン・カランの『アガサ・クリスティーの秘密ノート』書評を書いた。まだ書店にあると思うので、ご一読あれ。そしてこの本、買ってください。

 思いついたので、個人的なクリスティー・ベスト10を書いてみることにする。一応全部読んでいるはずなのだけど、再読はしていないものもあるので記憶は曖昧だ。一作を除き、あとは順不同ということで。

『そして誰もいなくなった』
 最初に読んだクリスティーで、やはり一番好きな作品。歯医者の待合室で、これから歯を削られるという恐怖に震えながら読んだのだ。ルネ・クレールの映画もやはり最初に観たクリスティー映画で一番好き。

『NかMか』
 トミーとタペンスものではこれがお気に入り。戦時下という状況を効果的に使っているのと、「犯人捜し」の容赦ない趣向に痺れる。本当は『秘密機関』じゃなくて、この作品の解説が書きたかった。

『ポアロのクリスマス』
 歪んだ心の持ち主に運命を握られた一族が登場する作品の系譜がクリスティーにはあるが、その中ではこれが最高傑作だと思う。冒頭数章の書きぶりは素晴らしく、さりげない伏線の張り方のお手本のようだ。

『ナイルに死す』
 海外の観光地を舞台にした作品の中ではこれが好き。『白昼の悪魔』とどちらにするか迷ったので、入れ替えることも可だ。人間関係の配置がとてもおもしろく、単純な着想だけで積み上げられた素晴らしい作品だと思う。

『死の猟犬』
 短篇集の中ではこれがいちばん印象深い。というのも収録作の一つ(たぶん「ラジオ」だと思う)が怖すぎて、初読から十年ぐらい手を触れるのも嫌だったという記憶があるからだ。恐怖小説を収めた作品集。

『終わりなき夜に生れつく』
 同じ趣向の先行作品よりも、こちらの方が個人的には好き。終盤になって明らかになるプロットの悲劇性は、先行作にはない要素だ。本書を読むといつも、ウィンストン・グレアム『幕が下りてから』のことを思い出す。

『象は忘れない』
 記憶の殺人を扱った作品では『五匹の子豚』のほうが出来がいいし、未読の人はそちらを読むべきである。でもこの作品の「象のように何事も忘れない人」を探す、という探偵術の趣向に不思議な魅力を感じる。

『鏡は横にひびわれて』
 ミス・マープルものの長篇は『ポケットにライ麦を』とどちらにしようか迷ってこっちにした。代替も可能。この作品のジェーン・マープルだけ、他にはない凄味があるところが妙に気になっている。作者に何かあったのだろうか。

『オリエント急行の殺人』
 あまりにも有名すぎる作品だけに躊躇したが、生まれて初めて最後まで読み通した原書がこれなので、その思い出を尊重して。よく言われているように延々と尋問が続くだけなのに、読者を退屈させないのが凄い。

『おしどり探偵』
 キャラクターものの短篇集では、これか『パーカー・パイン氏登場』が好き。収録作のアイディアで後に長篇に活かされたものも多い(と記憶している)。コンビ探偵のかけあいはいろいろな作家に影響を与えたはずだ。

 以上。いかがでしたか。みなさんのベストテンとはどの程度かぶっていましたか?

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