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(4/25)私がヒゲのPTA会長になった理由 その2

(承前)

 結局会社を辞めるまでには、最初に決意してから二年かかった。その間に父が亡くなったり、家を新築することになったり、妻が辞める予定のなかった会社を先に辞めてしまったり、いろいろと思わぬ出来事があった。会社を辞めてしまうのに家を新築したのは我ながら大胆だったとは思うが、それまで住んでいた部屋が会社の借り上げ社宅だったので、新しく借りるか、思い切って買うか、という選択に迫られたのである。結論としては買ってよかった。ローンさえ返してしまえば、食うのに困るほど仕事がなくなっても住む場所だけは確保できるからだ。

 辞表が受理された日は、子供を保育園に預けてから会社に出かけていった。
 すでに辞意は伝えてあったため、上司(前回出てきたのとは別の人)と話をして、あとは社員証を返したり、厚生年金を抜ける手続きをしたり、というような事務手続きをしただけだった。本で書式を調べて書いた退職願も、結局使うことはなかった。会社には、それ用のフォーマットの用紙がちゃんとあったからである。原紙をコピーしてもらい、所属部署と名前を書いた。それでおしまい。後生大事にとってあった手書きの退職願は、無用の長物だったのである。みなさんも会社を辞めるときは、専用の用紙があるかどうか総務部に問い合わせたほうがいいと思う。
 帰ってきたら、まだ正午だった。まず電話で美容室の番号を調べ、予約を入れた。それから箪笥の中に吊るしてあった、紺色のスーツの群れをまとめてゴミ袋に入れた。白のワイシャツもまとめて捨てた。冠婚葬祭の義理事で着るため一組だけは残しておいたが、あとは残らず燃えるゴミの日に出すことにした。もう二度と、会社勤めをすることはないだろうと思った。
 時間が来たので美容室に出かけていった。お兄ちゃんが一人でやっている店で、今はもうない。ブリーチして、カタギっぽくない金髪にしたいんです、と言うと「そうですね、一度はそういうアタマにもしてみたいですよね」と笑われた。生まれて初めて経験するブリーチは、予想もしていなかったほどに沁みて、痛かった。
 綺麗に脱色し、金髪にしたあと、子供を迎えにいった。保育士の先生がとんでもなく驚いた顔をしていたが、当然だろう。子供はなんだか平然とした顔をしていて、おもしろかった。
 こうして私は十年勤めた会社を辞め、とりあえず金髪の書評家になった。

(続くかもしれない)

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