そして迎えた取材当日。
本来私はPTA会長として区の行事に参加しなければならなかったのだが、さすがにぶっ飛ばしてきました。ごめん○○区長!
指定されたホテルに向かい、Yとロビーで落ち合って会場を訪れた。
あれ?
てっきり、テレビでよく観る記者会見のように、ひな壇に劇場形式で椅子が向き合うような会場を予想していたのだが、違っていた。大きな部屋が間仕切りでいくつかに仕切られている。広報担当の方が案内してくださった場所には、その間仕切りに「B」という貼紙がしてあった。
私「これはつまり……」
Y「Aから順番に取材を受けていきます、ということなんでしょうね」
そういうことなのか。つまり時間を細かく区切って(合同会見20分、各社単独10分と言われていた)、水谷&及川の両氏に移動してもらいながらインタビューをするんだろうな。あまり経験はないけど、そういうことだと決まったら問題はない。よし、だいじゃぶ。
そう思った瞬間に、広報担当の方は意外極まりないことを言うのであった。
広報「合同会見は、このBのブースで行いますから」
えええっ。
えーと、それはつまりこういうことですか。このBのブースで最初に全社のインタビューを受けて、それからお二人が各ブースをお廻りになると。ふむふむ。それは了解。しかし、我々は全体取材が終わった後で、一旦その会見机をばらして、早川単独取材の形にしつらえて、お話をうかがって、それでさらに撮影もしなければならないということですね。で、持ち時間は……。
Y「えーと、私たちの持ち時間は……」
広報「(なぜか目を伏せて)十分です」
うっひゃー。つまりばらして設営してまたばらして撮影をして十分なのね。しかしそういうものと判っていればどうということもない。我々は同行してもらったカメラマンと素早く相談を行ったのであった。
杉江「用意してきた質問は八分でなんとかまとめます。あと二分で撮影、大丈夫ですか!」
カメラ「やるっきゃないでしょおおおおおおおおお!」
三人ともここで炎上。まるで島本和彦の描くキャラクターのように瞳に炎が宿ったのであった。よし、だいじゃぶ。
とそこへ、広報氏のさらなる指示が。
広報「それでは各社、テーブルについてください」
杉江・Y「はい?」
見ると、長机が準備され、その向こう側には二脚の椅子が。そして手前側には取材各社分の椅子が準備されていた。ということはあれですか。この幅五十センチぐらいの机を挟んで、水谷豊・及川光博のお二人と、む、向かいあって座れと、そういうことですか。こ、こういう状態をたしか日本語では「まるでお見合いのような」と言うのではありましねえか?
広報「お見合いだかなんだか知らないけどそういうことです」
了解。だいじゃぶ! 編集Yに目顔で「君が座るか?」と訊ねたが、じりじりと後ずさりをしながらYは子犬のような表情を浮かべて首を振った。よっしゃ、そういうことならやむをえまい。
「よろしくお願いしまーす」
営業スマイルを浮かべて机についたその瞬間、
広報「水谷さん、及川さんがお入りになりまーす」
と声が響いたのであった。
この先は「ミステリマガジン」本誌で。あらかじめお断りしておきますが、以上のことからもお判りのとおり、インタビューは全体取材と単独取材の内容を再構成してお届けしております。その点、あらかじめお知りおきください。
インタビュー中、水谷豊氏が完全に「杉下右京を演じている水谷豊」になりきっていたのが印象的でした。右京のことを聞かれても「右京は」ではなくて「私は」なんですね。ああ、役者魂。そして、間近で見た及川光博は、本当にミッチーの及川光博でした。四十路を迎えた方に大変失礼な物言いかもしれないけど、やっぱり王子ですよあなたは。
ミステリマガジン「相棒」特集号が売れますように。