« (12/20)ひさしぶりに漫画家さんを取材に行くのでござる | Main | (12/24)私はライターであってライターさんではないです »

(12/22)「ユーリカ! ユーリカ!(全裸で街に飛び出しながら)」

 家を新築したとき、浴槽がらみでトラブルがあった。
 お湯を張ったのに、きちんと溜まらないのである。何度やっても、半分ぐらいにしか溜まらない。
 買ったばかりでけしからんと、頭から湯気を出しながらメーカーに電話をした。電話の向こうの相手は平身低頭(見てないけど、そういう声音)。すぐに修理を差し向けるという。しばらくして家の電話に着信があった。巡回中の作業員の方で、今からお邪魔するという。すでに頭は冷えていたので、申し訳ないと恐縮して住所を言った。それを向こうで控えている気配がして、そのあとおずおずと作業員氏は切り出してきた。
「ところで、最近お風呂の掃除をなさいましたか?」
 私は、その可能性はあると答えた。
「……そうでしたか」
 ここでなぜか万感の思いをこめているような間が入った。
 作業員氏は言う。
「あの、もしよろしければお風呂の栓をチェックしていただけないでしょうか。これこれの方法で見ていただくだけで結構ですので」
 それはとても簡単な点検方法だった。風呂の栓は弁のようなものが上下して穴を塞ぐようになっている。その弁を引き抜く。弁は下から突き出しているシャフトに刺さっているのだが、その下にもう一つ入っている部品がある。髪の毛などのゴミが下水道に入らないようにする網だ。網は心棒に穴が空いた独楽のような形をしていて、その穴がシャフトに刺さっている。
「その部品の上下を確かめていただけないでしょうか。お掃除のとき、まれに上下を間違えて戻される方がいるのです。そうすると栓と穴の間に微妙な隙間ができて、水が流れてしまうものですから」
 そのとおりだった。部品は上下の区別が一見わかりにくい構造になっており(しかし慣れるとよくわかる)、さかさまにはまっていたのだった。おそらく私か妻かが、掃除の際に間違えて戻したものだと思われた。
 故障、不具合と思って電話をしたのに実は自分たちのせいだった。私はたいへんに恐縮して氏に礼を言ったが、見知らぬ作業員氏は、いいんです、故障じゃなくてよかったです、と言って電話を切った。たいへんに好感を持ち、私はそれ以降栓の上下をきちんと確かめるようになった。
 おそらく私のような電話をかけてくる顧客は無数にいるのだろうと思う。電話を受けた人は、まずその可能性を疑ったことだろう。しかしそこで最初から客の言葉を疑わず、一度現場に電話を回してから、きちんと状況把握の質疑をした。そのことによって客とメーカーの間に信頼関係が築けたのである。賞賛すべき態度だと思った。私もメーカー勤務をしていた経験があるので、応対にあたった人々の素晴らしさがよく判る。

 ……ということで私はくだんの風呂メーカーに並々ならぬ好感を持っている(パチパチ)。しかし最近、またもや不具合が起きてしまったのである。
 この風呂は、毎回張るべき湯量を登録しておくことができる。少し多めとか少なめとか、家庭の事情によって調節が可能なのだ。ところが最近、それが狂いがちなのである。お湯を張ると、少し余る。入浴すると、余ってへりからお湯がこぼれてしまうのだ。
 数週間前にまたもや風呂の栓がきちんとしまっていないトラブルが生じ、それは長年の経験から栓のトラブルであることが判っていた(先にあげた部品ではなくて、もう少し下の方からユニットを引き抜いた際、きちんと戻していなかったのだ)。そのときにお湯がたまらず、あせって何度か張り直した。そのせいで登録を間違えたのではないかと疑い、幾度もお湯張りを試してみたのである。
 しかし何度やり直しても設定がおかしい。
 私は溜息をついた。あの感じのいい対応をする人々には申し訳ないが、これはやはり何かの電子機器の不具合だろう。購入してから何年も経つのだから、おかしくなる部分があっても仕方がない。おそらく修理は有償だろうから、問い合わせをしてみてどうするか決めよう。
 そう思って電話に手を伸ばしたとき、私は電撃の如く気づいたのである。

 設定が間違っているのは、私のほうなんじゃねえの?
 簡単なことだ。湯量は一定、しかしその中に沈める物体の体積が増えれば、その分だけ水位が上がる。
 これすなわち質量保存の法則なり(違う)。

 疑ってすまぬ、メーカーの諸君。私のせいだった。今書いている原稿群が片付いたら減量します。しますったらします。

|

« (12/20)ひさしぶりに漫画家さんを取材に行くのでござる | Main | (12/24)私はライターであってライターさんではないです »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61260/50367394

Listed below are links to weblogs that reference (12/22)「ユーリカ! ユーリカ!(全裸で街に飛び出しながら)」:

« (12/20)ひさしぶりに漫画家さんを取材に行くのでござる | Main | (12/24)私はライターであってライターさんではないです »